2012 Fiscal Year Research-status Report
子どもの発育・発達、成人の生活習慣病に及ぼす因子のマルチレベル解析による検討
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23590785
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
鈴木 孝太 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (90402081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山縣 然太朗 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (10210337)
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Keywords | 疫学 / コホート研究 / 母子保健 / マルチレベル解析 |
Research Abstract |
平成24年度は、20年以上にわたって山梨県甲州市と山梨大学大学院医学工学総合研究部社会医学講座によって行われている、母子保健長期縦断調査を継続した。調査内容については下記のとおりである。平成24年度は結合したデータセットを用いて、胎内発育と妊娠中の喫煙の交互作用、さらには妊婦の妊娠前の体格と妊娠中の喫煙の交互作用が、胎児・子どもの発育に与える影響について、また、小学生における入学時の体格がその後の身長の変化に与える影響について、マルチレベル解析を用いて検討した。 また得られた知見のうち、児が肥満となる時期による妊娠中の喫煙の影響が異なることを国際誌、子どもの肥満に妊娠中の喫煙が与える影響の生存解析結果を国内誌で発表し、これまでの研究結果のまとめを国際シンポジウム、胎内発育と妊娠中の喫煙の交互作用が子どもの発育に与える影響についての研究結果を国際学会において発表した。 甲州市母子保健長期縦断調査(甲州プロジェクト):1988年より甲州市(旧塩山市)において行政事業として、また、研究代表者らが参加した共同研究として実施している母子保健長期縦断調査においては、妊娠届出時に妊婦本人およびパートナーの年齢、妊婦の身長・体重、既往症、喫煙・飲酒を含む生活習慣などに関する質問紙調査を行っている。また、母子管理票により出生児の性別、身長・体重、分娩時の妊娠週数などの情報を得ている。さらには、1歳6カ月、3歳、5歳の各健診時に、身長・体重などの身体データに加え、母親に対する調査票を用いて、児の生活習慣についての調査を行っている。小・中学生に対しては、生活習慣に関する質問し調査を行い、児童生徒健康診断票から身長・体重データを得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、妊娠中の喫煙など、胎内環境に影響すると思われる妊婦の生活習慣が、子どもの発育に与える影響には男女差があり、男児でこのような暴露に対しての脆弱性がある可能性が示唆されている。一方で、妊娠中の喫煙に関しては、妊娠初期までに禁煙していれば、全く喫煙していなかった母親からの児と比較して、出生体重や3歳での発育に有意な影響がないことも示唆された。 さらに、妊娠前の母親の体格、さらに胎内発育は、妊娠中の喫煙の影響に対して作用修飾因子として働いており、同じ喫煙でも、やせている妊婦ではより胎内発育を抑制する方向に働くこと、胎内発育が順調だった児で母親が妊娠中に喫煙していると、その後児の肥満につながりやすいことなどが明らかになった。 各時点での妊娠中の喫煙の影響について、胎内発育や妊婦の体格の影響を層化して検討し、さらに繰り返しデータを用いたマルチレベル解析によって、新たな知見を得ており、研究の達成度としてはおおむね予定通りであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、これまでと同様母子保健縦断調査を継続し、データを集積することにより、より細かくカテゴリー化、あるいは男女などに層化した解析を行う。さらに、成人の生活習慣病についても、縦断データを用いてマルチレベル解析を用いた検討などを行う予定である。また、これらの知見を国際誌、あるいは国際学会などで発表することにより、研究結果を世界に発信するとともに、同じ研究領域での研究の進捗状況などについて情報収集を図る予定である。 一方で、研究成果を地域へと還元するために、研究成果をもとにしたリーフレット作成や、地域での啓発活動などを、地域の保健担当者と共に行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度も、平成24年度と同様、母子保健縦断調査にかかる、入力作業などの人件費(アルバイト)や調査用紙、報告書の印刷費用、さまざまな消耗品購入を目的に研究費を使用する予定である。さらに、学会発表や国際誌への投稿にかかる費用についても、研究費から使用する予定である。 また、平成24年度は成人のデータに関して、あまり解析が進まなかったために、学会発表を行うことができず、繰り越しの研究費が発生したが、今年度は、これらについても研究を進めていくため繰り越しの研究費を本年度の研究費と共に使用する予定である。
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