2011 Fiscal Year Research-status Report
ダイビング剖検診断における血管内気泡の意義:加圧・減圧モデルからのアプローチ
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23590855
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
宮崎 哲次 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10144825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井濱 容子 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80347137)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 減圧症 / スキューバダイビング / 血管内気泡 / 脂肪塞栓 / 剖検診断 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ダイビング中の死亡例における血管内気泡の発生条件とその診断意義を明らかにすることである。研究手法は、加圧・減圧モデルを作成して条件ごとに血管内気泡や剖検所見を比較・検討するものであり、段階的に研究を進めている。(1)加圧・減圧装置の作成:ダイビングに伴う加圧・減圧を実験的に再現させるために加圧・減圧装置を設計して作成した。(2)機器の調整:ダイビングの潜水・浮上を再現させるためには微妙な加圧・減圧操作が求められ、加圧ポンプや脱気バルブの機器側の調整とともに、操作する術者側にも訓練が必要であった。その結果、ダイビングに伴う圧変化を加圧・減圧装置によって再現することが可能となった。(3)減圧症モデルの確立:第一段階としてラットによる減圧症発症モデルを作成した。加圧室内の気圧を速やかに6気圧(水深50m)に上げて1~3時間維持した後、速やかに大気圧に減圧する「(1)減圧症モデル」を作成した。現在のところ、減圧症モデルによる死亡率は約53%である。さらに、加圧状態で炭酸ガスによって死亡させた後に減圧する「(2)加圧死亡後・減圧モデル」、大気圧で死亡させた後に加圧・減圧を行う「(3)死体加圧・減圧モデル」も作成した。(4)各種モデルにおける血管内気泡の比較・検討:上記(3)で作成した(1)~(3)における血管内気泡の量は(1)>(2)>>(3)の傾向であった。(2)にも血管内気泡が認められたことから、気泡は死後にも発生することが明らかとなり、気泡は減圧症の診断根拠とはなり得ないことが証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、研究実施計画において予定していたよりも加圧・減圧装置の作成と、装置を使いこなすための訓練に時間を必要としたが、平成23年度中に実施を計画していた3つのモデル((1)減圧症モデル、(2)加圧死亡後・減圧モデル、(3)死後加圧・減圧モデル)はいずれも作成することができた。また、それぞれの血管内気泡についても比較・検討を進めているところであり、本年中の実験実施はほぼ計画通り進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の実験計画のとおり気泡の量や分布、性状を詳細に検討することによって、(1)減圧症モデルと(2)加圧死亡後・減圧モデルを区別することが出来るかどうかについて検討する。さらに、(1)減圧症モデルにおいて死亡例と生存例では血管内気泡の量が異なり、減圧症による生死は気泡の量に依存していることが示唆されたが、同一モデルにもかかわらず気泡の発生量が異なった理由についても今後検討したい。 一方、各モデルに対して組織検索を行っていたところ、(1)減圧症モデルの死亡例において肺血管内に脂肪塞栓様のものが観察される症例に遭遇した。減圧症では、減圧によって脂肪組織に溶け込んだ窒素が気化して、脂肪滴が血管内に流入することがある。肺における脂肪塞栓の存在は、減圧症が発症した時点で全身循環が保たれていたことの証拠であり、減圧症の剖検診断のひとつになる可能性がある。現在、脂肪塞栓が減圧症の診断根拠として利用できる可能性についても新たに検討を進めている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の実験計画通りに、本年度中に加圧・減圧装置ならびにその調整は終了しており、次年度以降は実験動物(Wistar系ラット)や各種消耗品(麻酔薬、解剖ならびに組織標本作製のための消耗品)が必要となる。さらに、脂肪塞栓の診断のために脂肪染色のための費用が新たに必要となると考えている。
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