2012 Fiscal Year Research-status Report
剖検例の中毒学的検査を利用した静脈内投与薬物の胃内移行量の解明に関する研究
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23590864
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
守屋 文夫 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 教授 (40182274)
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Keywords | 法中毒学 / 薬物分析 / 塩基性薬物 / 胃内分泌 / 静脈内投与 / 医療処置 / ガスクロマトグラフィー / ガスクロマトグラフ-質量分析法 |
Research Abstract |
本年度は、法医解剖216例を対象に、医療機関において死亡が確認された事例及び医療機関外で静脈内に薬物を投与したことが疑われる事例について、血液、胃内容及び尿の薬物分析を実施した。昨年度と同様に、胃内容と尿のイムノアッセイ(Triage DOA)とGC-FTDによる薬物スクリーニングを実施した後、GC-MSによる薬物の確認を行った。薬物の定量はGC-FTDを使用して行った。捜査当局からインフォームド・コンセントの下に提供された医療機関等での薬物使用状況を詳査し、薬物分析結果を評価した。本年度も、医療機関を経た事例では、気管内挿管に由来するリドカインが検出される割合が多かった。非経口投与という点では静脈内投与と同類として扱うことができるが、口腔内や咽頭部に付着したリドカインの嚥下の問題があり、静脈内から胃内への薬物排泄動態を評価することは困難であるので、本研究の対象から外した。本年度は、本研究の目的にかなった事例が3例認められた。各事例から検出された塩基性薬物は、ケタミン、ドキサプラム及びリドカインであった。胃内容は70~250 g(pH:4~5)であった。ケタミン、ドキサプラム及びリドカインの胃内容/血中濃度比は、それぞれ18.1、14.2及び3.70であった。なお、医療処置時に酸性薬物のフェニトインを投与されたものが2例認められた。胃内容は70及び250 g(pH:4及び5)であった。フェニトインの胃内容/血中濃度比は0.44及び0.32であった。事例が少ないこと、および薬物の種類や投与時期が異なることから、データの解釈に大きな制約があるものの、医療時に静脈内投与された薬物は、その物性が塩基性であれば胃内への分泌が顕著であるが、酸性であればわずかであることが実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
法医解剖例には医療機関を経た事例がかなり含まれるが、その中で本研究の対象となるもの、すなわち死亡の2、3日以内に塩基性薬物が使用されかつ静脈内投与のみが行われた事例の数は限られている。しかしながら、本年度も研究対象候補事例の地道な薬物分析と死亡状況の詳査を行うことにより、3例の対象事例の存在を明らかにし、それらの胃内容と血液の薬物濃度の関係を解析することができた。また、塩基性薬物使用例の比較対照となる酸性薬物使用例の存在(2例)を明らかにし、薬物分析結果の解析を行うことができた。したがって、研究はおおむね順調に進行したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、検討の対象となる事例を地道に集積することが肝要である。したがって、本年度と同様に、研究対象候補と思われる事例の薬物分析と死亡状況の詳査を継続して実施する。また、医療目的ではないものの、塩基性薬物の胃内排泄動態という視点から、覚せい剤であるメタンフェタミンが静脈内に自己投与されたことが明らかな事例の、メタンフェタミン分析と死亡状況の詳査も併せて行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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