2013 Fiscal Year Annual Research Report
出血性ショック時の腎臓障害における出血速度の影響について
Project/Area Number |
23590865
|
Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
佐藤 寛晃 産業医科大学, 医学部, 准教授 (50441845)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 敏子 産業医科大学, 医学部, 講師 (80141745)
笠井 謙多郎 産業医科大学, 医学部, 助教 (40169397)
|
Keywords | 出血性ショック / 出血速度 / TNF-α / IL-1β |
Research Abstract |
全身麻酔下のラットの左大腿動脈にカテーテルを挿入して全血液量25%を出血させる出血性ショックモデルにおいて, 5分,20分および60分かけて出血させた出血速度の異なる3群と出血させないSham群との計4群を作製し,出血5時間後までの病態変化およびBUN/クレアチニンによる血清学的腎臓障害の変化,腎臓の組織学的変化および腎臓実質中のTNF-αやIL-1βなどの炎症性サイトカインの発現の変化について観察した。その結果,出血速度が遅い群ほど,血清学的腎臓障害が悪化するとともに,尿細管上皮の壊死,尿細管腔の拡張や尿円柱の形成,間質の浮腫などの組織学的傷害が確認され,同様に出血速度が遅い群ほど炎症性サイトカインの発現が高度となった。これらの変化の原因として,出血速度が遅い群ほど,出血後の循環調節機能が低下して低血圧状態が持続し,腎組織血流量減少による腎臓実質の虚血が増強され,腎臓実質中の炎症性サイトカインの発現が増強されて,より高度に炎症性腎臓傷害が生じたためと考えられた。そこで,炎症性サイトカインの発現阻害剤であるFR167653を,出血群のうち血清学的・組織学的変化や炎症性サイトカインの発現が最も高度であった「60分かけて出血させた群」に投与して,その血清学的・組織学的な腎臓障害について検討を試みた。その結果,炎症性サイトカインの発現は高度に抑えられるとともに,血清学的・組織学的な腎臓障害が著明に改善した。 これらの結果を踏まえ,出血の総量が同じであれば出血速度が遅いほど,血清学的・組織学的な腎臓障害が進行し,その原因の一つとして,腎臓の組織血流量の減少による炎症性サイトカインの発現による炎症性腎臓傷害の増強が関与している可能性が考えられた。また,法医実務において,腎臓の組織学的傷害の強さが,出血速度の推定に応用できる可能性を明らかにした。
|