2011 Fiscal Year Research-status Report
リピドミクス解析による漢方薬の新しい脂質代謝制御活性の検出
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23590873
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
渡辺 志朗 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (00222406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
常山 幸一 富山大学, 医学薬学研究部(医学), 准教授 (10293341)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | トリグリセリド / リポプロテインリパーゼ |
Research Abstract |
初年度(平成23年度)においては、コール酸添加高脂肪食(HFCA)を与えることによって誘導されるコレステロールの顕著な蓄積を伴う脂肪性肝炎症状に対する防風通聖散(BTS)の影響を、マウスを用いて検討した。血清脂質プロファイルの解析から、BTSの投与は血清中のトリグリセリド濃度を低下させる傾向を示した。しかしながら血清中のコレステロール濃度に対しては、影響を及ぼさなかった。肝臓のmRNA発現解析より、リポプロテインリパーゼ(LPL)の遺伝子発現量がBTS投与により有意に高くなっていることが判明した。一方、血清中の脂質脂肪酸組成をリピドミクス解析により調べたが、BTSは血清中脂肪酸組成には影響を及ぼさないことがわかった。以上の結果から、BTSは肝臓のLPLの発現量の増加を介して血清中のトリグリセリド濃度の低下傾向を誘発したと考えることができる。ただしBSTは脂肪酸組成の変化を誘導しなかったことから、このBTSの作用には脂肪酸の鎖長延長および不飽和化反応の変動は関与しないものと考えられる。一方BTSの投与は、肝傷害のマーカーである血清中トランスアミナーゼ活性値および肝臓中の炎症性サイトカインのmRNA発現量には有意な影響を及ぼさなかった。それ故BTSには肝炎症状を軽減する作用は認められないと判断できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、防風通聖散の脂肪性肝炎に伴う脂質代謝に及ぼす影響を明らかにすることができたことから、本研究の達成度は満足できるものと判断している。ただし本漢方方剤には、本脂肪性肝炎モデルの主な病因であるコレステロール蓄積や肝炎症状に対する目立った影響が認められなかったために、これらに関する詳細な解析を進めるには至らなかった。この点により平成23年度において使用予定であった研究経費の一部が余剰となった理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画における推進方策を変えることなく、平成24年度においては防已黄耆湯の脂肪性肝炎に伴う脂質代謝に及ぼす影響を検討する。ただしリピドミクス解析に関しては今後はより詳細な結果が得られるように、脂質分画をより細かく行い、その脂肪酸組成の比較を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度において研究経費の若干の余剰が生じたため、この経費分はリピドミクス解析をより詳細に行うために使用できる。その他の研究費の使用計画は概ね当初のものとは異ならない。
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Research Products
(5 results)