2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590971
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
藤田 尚己 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (80378398)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
小腸上皮細胞より分泌されるインクレチンは主に膵臓でのinsulin分泌増強作用やglucagon分泌抑制作用を介して血糖を低下させる。本研究では、インクレチンの肝臓での糖脂質代謝に及ぼす影響、更には肝線維化や肝発癌への関与を検討し、生体に及ぼす肝臓を介したインクレチン作用を明らかにすることを目的としている。そのため、まず本年度は肝細胞内に直接、インクレチンシグナルの到達を認めることを、1)肝細胞膜表面へのインクレチンレセプターの発現をreal-time PCRや免疫染色法にて確認し、2)更には本来のインクレチン標的臓器である膵β細胞にてインクレチンシグナルが細胞内に到達する際に上昇するカルシウム濃度やPDX-1の発現が、肝細胞内においてもインクレチン添加時に上昇していることを確認した。次に、インクレチンの肝細胞における糖脂質代謝への影響を検討しており、肝細胞株にインクレチンを添加させ、細胞内脂肪量の増加と糖代謝関連酵素の幾つか (CREB, PGC1α, G6PC, PCK1, GK)の発現に変化のあることをmRNAレベルと蛋白レベルにて確認してきた。今後更に、脂質代謝関連遺伝子(SREBP-1&2, MLX, ACC, PK, PPARα, AOX,MTTP, DGAT-1&2, perilipinなど)の発現動態の解析と、肝線維化へのインクレチンの影響(細胞の形態的変化や線維化関連遺伝子(procollagen, MMPs, TIMPs, ICAM-1, VCAM-1など)の発現動態の解析、更には線維化関連サイトカイン(TGFβ, PDGFなど)の発現動態の解析によって)や、肝発癌に及ぼす影響(細胞の増殖能やapoptosisに及ぼす影響細胞増殖関連signal遺伝子の解析によって)を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の様に現在、全ての計画の約1/3程度進んだと考えられる。今後、同様に実験計画に基ずいて、実験を遂行したい。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の様に、現在インクレチンシグナルの肝細胞質内への到達とそれに伴う、脂肪蓄積軽減作用と糖代謝関連酵素の発現変化を確認している。今後は、脂質代謝関連遺伝子(SREBP-1&2, MLX, ACC, PK, PPARα, AOX,MTTP, DGAT-1&2, perilipinなど)の発現動態の解析をreal-time PCR法やWestern法にてmRNAや蛋白レベルにて検討する。更には、HPLC法による脂肪分画組成の変化や細胞上清での糖レベルの変化を検討する。そして本年度はin vivoによる検討して、マウスに対しインクレチンを投与し肝臓における糖脂質代謝の変化を検討する。また、肝線維化へのインクレチンの影響の検討として、肝線維化進展に重要な肝星細胞の活性化を細胞の形態学的変化や、免疫染色等によって細胞質内でのαSMAやデスミンの発現動態の変化、更には線維化関連遺伝子(procollagen, MMPs, TIMPs, ICAM-1, VCAM-1など)の発現動態の解析を、同様にreal-time PCR法やWestern blotting法にて検討する。また、インクレチンの肝発癌に及ぼす影響として、細胞の増殖能やapoptosisに及ぼす影響細胞増殖関連signal遺伝子の解析にも検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の様に、現在インクレチンシグナルの肝細胞質内への到達とそれに伴う、脂肪蓄積軽減作用と糖代謝関連酵素の発現変化を確認している。当初の計画よりも実験がスムーズに進行しており、再実験等を行う必要がなく、その分、前年度に未使用額が生じた。今後は、脂質代謝関連遺伝子の発現動態の解析やHPLC法による脂肪分画組成の測定、更にはマウスを用いた実験を予定しており、これを当該未使用額と本年度の研究費用にあてたい。
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