2013 Fiscal Year Research-status Report
閉塞性動脈硬化症に対する単核球移植とアドレノメデュリン併用療法
Project/Area Number |
23591053
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
北 俊弘 宮崎大学, 医学部, 准教授 (70315365)
|
Keywords | 末梢動脈疾患 / アドレノメデュリン / 末梢血単核球移植 / 血管再生 |
Research Abstract |
末梢動脈疾患による重症下肢虚血の治療には限界があり、特に血行再建術の対象とならない患者への治療法は確立していない。我々は、このような患者に対して、末梢血単核球移植術とアドレノメデュリン持続静注(1.5 pmol/kg/min、1日8時間×2週間)併用療法を考案した。アドレノメデュリン併用の効果を評価するために、プラセボを対照とした二重盲検法により臨床試験を開始し、平成24年度に2名の患者に対して本治療法を実施した。2名の患者に関しては、実施6か月後に有効性の判定を行い、1名に関しては12ヶ月後まで経過観察を終了した。その後、平成25年度にも2名の患者(ともに糖尿病を主要な原因とする閉塞性動脈硬化症)に対して本治療法を実施した。 血管内治療法の進歩に伴い、各種細胞移植による血管再生治療実施数が急速に減少してきており、厚生労働省の調査でも平成24年7月1日から平成25年6月30日の間の「末梢血単核球移植による血管再生治療」実施数は全国でわずか25例であった。このことを踏まえて、上記4名の患者の治療実施後に試験計画の見直しを行った。アドレノメデュリンとプラセボを使用した二重盲検法では、必要な患者数の確保が困難であると判断し、今後はアドレノメデュリンのみを用いたオープン試験とすることとし、過去に行った試験の開封を実施した。結果、2名にアドレノメデュリン、2名にプラセボが投与されていたが、アドレノメデュリンを併用して1年間の観察が終了した患者では、自覚症状、下肢血流測定、歩行距離等で治療後1年間有効性が持続していた。また、アドレノメデュリン投与による有害事象はみられなかった。他の1名のアドレノメデュリン投与患者は、患者都合で予定の治療が完遂できず、評価は困難である。 今後は、末梢血単核球移植術とアドレノメデュリン持続静注併用療法実施数を積み上げ、高度医療Bへの申請を目標としている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
臨床試験実施に必要なアドレノメデュリン製剤は確保されており、研究実施体制にも問題はなかったが、本研究の対象となる血行再建術の適応とならない末梢動脈疾患患者の確保が困難であった。ここ数年の間に、下腿末梢の血管に対しても血管内治療やバイパス術を積極的に行うようになってきており、血管再生治療の対象となる患者は非常に限定的となってきている。厚生労働省の調査でも平成24年7月1日から平成25年6月30日の間の「末梢血単核球移植による血管再生治療」実施数は、全国11施設でわずか25例であった(前年度22例)。このような状況下では二重盲検法で十分な患者数を確保することは不可能であり、アドレノメデュリンのみを使用するオープン試験へと試験計画を変更した。
|
Strategy for Future Research Activity |
患者のリクルートを進めるべく、さらに広報活動を積極的に実施していく。従来、内科系の病院を中心に患者紹介を依頼していたが、当大学の血管外科をはじめとした外科系の施設にも広く患者紹介を依頼していく予定である。今後は、末梢血単核球移植術+アドレノメデュリン投与のオープン試験として臨床試験を遂行することとし、宮崎大学医学部医の倫理委員会の承認を得て実験計画の変更を行った。できるだけ患者数の上積みを行い、早期に先進医療Bへの申請へとつなげていきたい。なお、厚生科研の予算によりGMPに準拠したアドレノメデュリン製剤(凍結乾燥注射製剤)が平成26年度中に確保できることとなり、先進医療申請への大きな障壁がなくなったことは有利な状況である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
十分な数の患者登録ができなかったことより試験計画の遅延が生じたため、実験計画の見直しを行い、1年間の補助事業期間延長を申請し、承認をいただいた。 末梢動脈疾患患者に対する末梢血単核球移植術およびアドレノメデュリン持続投与試験を継続し、治療および経過観察に必要な消耗品購入費用、末梢血液中の各種バイオマーカー測定費用等に補助金を使用予定である。
|