2011 Fiscal Year Research-status Report
気管支喘息およびChurg-Strauss症候群におけるTh9細胞の役割の解明
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23591113
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
廣瀬 晃一 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (90400887)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高取 宏昌 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (30568225)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Th9細胞 / 難治性喘息 / Churg-Straus症候群 / ハウスダスト |
Research Abstract |
本研究者らは気管支喘息の重症化機構を解析し、IL-17産生性T細胞(Th17細胞)がTh2細胞依存的に生じる好酸球性炎症を増悪させること、さらにアレルギー性気道炎症の場である肺にIL-22を特異的に産生するT細胞が誘導されること、IL-22が気道上皮からのIL-25産生を抑制することによりアレルギー性気道炎症を負に制御していることを示してきた。一方、近年見出されたIL-9産生性CD4陽性T細胞 (Th9細胞)のアレルギー性気道炎症における働きは一切不明である。そこで本研究ではアレルギー性気道炎症におけるTh9細胞の働きを解明することを目的とした。 平成23年度の研究ではC57B/6jマウスにハウスダスト抽出物(HDM)を経気道的に投与することによりアレルギー性気道炎症を惹起し、気管支喘息のモデルマウスを作製した。このモデルマウスにおいてはヒトの気管支喘息と同様に好酸球性炎症が惹起され、肺および縦隔リンパ節へのTh2細胞浸潤が認められた。さらに肺、縦隔リンパ節へ浸潤しているCD4陽性T細胞のサイトカインプロファイルを細胞内サイトカイン染色法により検討したところTh9細胞の浸潤も認められた。しかし興味深いことにこのTh9細胞はIL-13産生性T細胞、IL-5産 生性T細胞とは異なる細胞集団であることが明らかとなった。現在、同モデルにおいて肺に浸潤するTh9細胞の詳細とともに、アレルギー性気道炎症発症におけるTh9細胞の役割、さらにTh9細胞分化に関与する転写因子を網羅的に解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既にアレルギー性気道炎症のモデルマウスの作成、ならびにその解析に着手しておりTh9細胞の同定、その細胞プロファイルの解析を行っており、順調に進展しているものと考える。研究者らはすでにHDM誘発性アレルギー性気道炎症モデルマウスの肺においてTh9細胞のサイトカイン産生能の解析、ならびに肺、縦隔リンパ節における動態の解析に着手しており、当初の研究計画と比較しても順調に進展していると考えられる。 アレルギー性気道炎症発症における抗原特異的Th9細胞の役割に関しては着手しているものの、次年度に行う予定である"Th9細胞の可塑性"が解明されていないためにまだ十分な結果が得られてはいない。また、Th9細胞分化における各種転写因子の役割の解析にも着手し、この解析に必要な各種遺伝子欠損マウスもすでに入手しコロニーを拡大しているが、実際の解析は次年度以降となる予定である。 これらの結果を総合的に判断し、また当初の計画と比較検討し本研究計画はおおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
T-bet、STAT family転写因子はT細胞分化に深く関与していることが示されているが、Th9細胞分化における働きは不明な点が多い。今後はT-bet欠損マウス、および各種STAT欠損マウスにおいてHDM誘発性アレルギー性気道炎症を惹起しTh9細胞分化を比較検討する。これらの研究によりTh9細胞分化における転写因子の役割が明らかにされるとともに、アレルギー性気道炎症の惹起におけるこれら転写因子の役割、ならびにTh9細胞の働きが解明される。さらに、同モデルマウスにおいてTh9細胞のサイトカイン産生能、ならびに細胞導体を解析することによりTh9細胞の機能における転写因子の役割を明らかにする予定である。 近年、これまで安定と考えられていた各ヘルパーT細胞サブセットのサイトカイン産生特性に可塑性が認められることが示されている。一方本研究者は、Th9細胞は他のT細胞サブセットに比して可塑性が乏しいことを見出した。さらにこの分子基盤の解明を目的にTh9細胞において高発現する転写抑制因子を探索し、Th9細胞にはIkaros familyに属する転写抑制因子IKZF4(Eos)が高発現していることを見出した(未発表データ)。そこで本研究計画では、Th9細胞のサイトカイン産生特性の維持機構におけるEosの役割を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の達成には、マウスの購入、制限酵素等の分子生物学的な試薬、各種抗体、培養液、牛血清、トランスフェクション関連試薬、合成DNA等の消耗品を要し、平成24年度は150万円研究経費を要する。 一方、本学では、SPF環境下での動物飼育施設、P2施設等の設備は整っており、また、予定している研究に必要なフローサイトメーター、気道過敏性測定機、共焦点顕微鏡、Real-time PCR解析機、キャピラリー式DNAシークエンサー等の設備も既に本学内で準備されているため、科学研究費補助金を大型機器等、備品の購入にあてる必要は生じない。 また研究は、本研究者、および本学所属のスタッフと大学院生によって施行されるため、科学研究費補助金を人件費として使用する予定もない。 研究成果発表等に必要な旅費も公費を使用する予定であり、科学研究費補助金を使用する予定はない。
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