2012 Fiscal Year Research-status Report
BMPによる糸球体血管係蹄発生と正常構造維持における役割
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23591202
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
宮崎 陽一 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60266690)
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Keywords | ネフロン / 細胞間クロストーク |
Research Abstract |
平成24年度は、Doxycycline(Dox)投与によって誘導される糸球体上皮細胞特異的Noggin過剰発現マウス(Podocine-rtTA; TetO-Noggin) に関して、安定した形質を示すマウス系統の樹立を試みた。Podocine-rtTA; TetO-NogginをC57BL6/Jと3回以上backcrossした結果、糸球体血管係蹄の虚脱、糸球体嚢胞の形成および尿細管発達障害という形質を安定して呈する、2系統の独立したPodocine-rtTA; TetO-Noggin の樹立に成功した。Podocine-rtTA; TetO-Nogginを継代・繁殖し、3から5ヶ月令のマウスにDoxを投与し(Dox+、n=8)、3ヶ月後に解析したところ、Doxを投与しなかったマウス(Dox-、n=6)に比較し、尿蛋白排泄量の有意な増加が認められた。腎組織解析では、糸球体の構造や基底膜の成分に関してDox+とDox-の間に明らかな差は認めなかったが、Dox+ではDox-に比較し、TG-lectin陽性の近位尿細管が有意に減少していた。近位尿細管細胞の増殖活性と細胞死を検討したところ、Dox+ではDox-に比較しTUNEL+細胞は同程度に認められたが、BrdU+細胞が有意に少なかった。Dox+ではコラーゲンの増加を伴わない間質幅の拡大が認められ、間質の浮腫性拡大と判断された。最後に、近位尿細管細胞におけるSmad1/5/8のリン酸化を検討したところ、 Dox+では有意にP-Smad1/5/8 陽性細胞数が低下していた。以上の結果から、podocyte由来のBMPは糸球体と尿細管のクロストークに関与し、成体においても、近位尿細管の正常構造の維持に必須の役割を担う事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、樹立したPodocine-rtTA; TetO-Nogginを用いて成体におけるPodocyte-BMPの機能に関して一定の結果が得られたが、胎生期における糸球体発生に対するBMPの機能に関してはほとんど研究が進まなかったため
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、Podocine-rtTA; TetO-Nogginに関して、胎生期をさかのぼって解析することにより、特に糸球体血管係蹄にみられる異常形質に関して、primary defectを同定する。コントロールと比較し、ほとんど組織学的差異を見いだせない時期やごく軽度の差異しか認められない時期を見出し、RNAおよび蛋白を抽出し、angiogenic growth factorやangiogenesis inhibitorに関して網羅的にPCR-arrayやproteome解析を行い、介在する候補分子を検討する。特にBMPは様々局面においてmatrix metalloproteinase (MMP)の発現、活性を調節すること、またMMPの調節は血管新生や血管安定化に必須であることが知られており、本研究においてもMMPに注目し、定量的、定性的あるいは組織分布などの評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度においては、解析実験が主となり、組織解析関連費が約100,000円、生化学的解析費が約200,000円程度と予想された。 RNA array および抗体arrayにかかわる各試薬はすでに購入済みであり、生化学的解析に上記の費用がかかると試算した。また新たな抗体の購入を含む組織解析関連試薬に対する費用も多くなると予想されるが、前年度までにその多くを既に入手、準備済なので上記の経費と判断した。
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Research Products
(2 results)