2012 Fiscal Year Research-status Report
細いヘンレの上行脚における細胞間隙ナトリウムイオン輸送の解析
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23591211
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
森本 哲司 日本大学, 医学部, 助教 (10344657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根東 義明 日本大学, 医学部, 教授 (00221250)
内田 信一 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (50262184)
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Keywords | 尿細管 / クローディン4 / アルドステロン / 拡散電位 |
Research Abstract |
2005年にLe Moellicらは、アルドステロンがクローディン4のリン酸化を促進し、タイト結合のイオン透過性を修飾するという報告をしている。そこで、マウスの細いヘンレの上行脚(ATL)におけるナトリウムイオン透過性にアルドステロンが関与しているか否かを単離尿細管灌流実験で確認した。その結果、ATLの定常状態における拡散電位は15.09±0.88 mV(n=5)であり、0.1mMのネオマイシンを浴液側に添加すると電位は16.17±0.73mVにまで上昇した。次に、10-9Mのアルドステロンを浴液側に加え、15~20分間インキュベーションした後に、拡散電位を測定した。電位は、定常状態が15.01±1.25mVであり、0.1mMのネオマイシンで刺激すると16.25±0.99mVにまで上昇した。アルドステロンの添加前後の電位を比較したが、定常状態および0.1mMのネオマイシンで刺激した際の電位に統計学的有意差はなかった。すなわち、本実験結果からはアルドステロンの短時間インキュベーションは、マウスのATLにおけるナトリウムイオンやクロライドイオンの透過性に影響を及ぼさないことが示唆された。Le Moellicらの報告と異なる結果となったが、彼らは不死化細胞を用いた実験系であり、我々は単離尿細管を用いた実験だったからと推察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
クローディン4の特異的阻害薬であるClostridium perfringens enterotoxin(CPE)のC末端ペプチド断片の大量精製を昨年度試みたが成功しなかったため、別な手法で再度今年度行ったものの、十分量の精製されたC-CPEを得ることができず、この研究は一時的に保留せざるを得なかった。そのため、次年度に予定していたEpidermal Growth Factor(EGF)を用いた実験を前倒しで敢行した。ところが、EGFによるクローディン4蛋白発現増大効果を最大限に得るためには、長時間のインキュベーションが必要であることが実験中に解ってきた。しかし、長時間灌流法は細菌や真菌のコンタミネーションの問題があり、試行錯誤を繰り返しながら実験を継続してはいるものの、これらの困難のため研究の進展が遅れてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年のアメリカ腎臓学会で、単離した尿細管を12~24時間経過後に、その尿細管機能を解析することができるという実験手法があることを知り得た。この手法は、マウス腎臓から標的尿細管分節を単離し、DMEM+10%FBSでインキュベーションした後に、灌流実験を行ないその特性を調べる手法であった。我々は、灌流しながら長時間インキュベーションすることをこれまで試みてきたが、コンタミネーションなどの問題があり実験手法を確立することができなかった。幸い、パーソナルインキュベーターは元々保有していたので、直ちにこの手法を習得すべく必要物品を揃え、予備実験を行なう準備を整えつつある。この手法を確立できれば、前年度に成功させることができなかったEGFを用いた灌流実験に取り組む予定である。 また、C-CPEの精製に関しては、困難を極めているため異なる研究手法を検討している。上述の単離尿細管の長時間インキュベーション方が確立すれば、siRNAを用いた標的遺伝子のノックダウンも可能となりうるので、代替実験として行うことを視野に入れている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでと同じく動物実験が主体なため、マウスを購入するための費用が必要です。灌流実験では実験毎に大量の溶液を消費するため、この灌流液の作成に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどの高純度の試薬、埃や細菌を除去するフィルターなどを購入するための費用が必要です。 また、昨年度のように学会参加によって自身研究分野に関わる最新の知見を得ることは非常に有益であり、学会参加時の旅費などに研究費を使用する予定です。
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