2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23591241
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高岸 芳子 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教 (50024659)
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Keywords | 有髄神経線維 / パラノード / 神経軸索変性 / 神経細胞死 / ランビエ絞輪 |
Research Abstract |
本研究では、有髄神経ランビエ絞輪パラノード部に局在する膜タンパクCasprをコードする遺伝子に変異を持つ突然変異マウス(shambling;shm)の中枢ならびに末梢神経系の異常を研究する。マウスの神経症状の発症期から重篤となる老齢期までの病態進行過程を研究して、その機序の解明を目指す。これによって、ヒトの神経変性疾患の病態モデルを提唱する。本年度は、神経症状を発症した直後の幼若期(生後2~3週齢)から重篤となった老齢期(生後1年以上)までのマウスを経時的に解析して、神経軸索の変性や神経細胞の脱落(昨年までの研究結果)の病態進行過程を以下のように明らかにした。 1:幼若期と成熟期のshmマウスの坐骨神経では、有髄神経線維の形成と成熟、主要な軸索骨格タンパクであるニューロフィラメント(NF)の分布やリン酸化による成熟に、正常マウスとの差はみられなかった。しかしながら、老齢期のshmマウスでは、軸索径の太い神経線維の減少や成熟型NFタンパク量の減少がみられた。このことから、shmマウスの有髄神経線維では、加齢によって軸索内の細胞骨格の変調が起こり、軸索の変性や消失が起こったと考えられた。2:shmマウスの小脳では、幼若期から老齢期まで、小脳の組織形成に異常はみられないが、小脳の主要神経細胞であるプルキンエ細胞の変性と脱落がみられた。幼若期のプルキンエ細胞は正常であったが、生後3ヵ月になるとプルキンエ細胞軸索に球形に肥大した部位が存在した。生後6ヵ月になると、プルキンエ細胞軸索の肥大は増加し、一部のプルキンエ細胞が脱落していた。老齢期では、プルキンエ細胞の脱落がほぼ小脳全域で観察され、残存しているプルキンエ細胞の軸索肥大は更に増大し、髄質にも存在した。従って、プルキンエ細胞の異常は成熟期から老齢期へ至る過程でより重篤となり、加齢が起因していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ヒトの神経変性疾患の病態機序の解明に寄与することを目標に、shmマウスにみられる進行性神経症状の病態解明を目指して研究を行っている。shmマウスでは、原因遺伝子の異常が有髄神経線維ランビエ絞輪パラノード部に存在する。パラノードはランビエ絞輪の両側に位置し、軸索―グリア間相互作用の場として有髄神経線維の機能維持に重要な働きをしており、近年、様々な神経変性疾患の発症部位になっていると考えられるようになった。申請者は、神経症状が発症する生後早期から老齢期までのマウスで、中枢や末梢神経系の様々な部位を経時的に解析して、病態の進行過程を研究した。一連の研究結果から、shmマウスでは、パラノードに起因する異常が、神経軸索の細胞骨格に変調をもたらし、これが軸索輸送の障害となり、その結果、細胞体の変性や細胞死に繋がると考察することが出来た。これは、ヒト神経変性疾患の新たな病態機序の提唱になると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(今後の推進方策) 本研究への助成は、平成23年度から25年度までのものであった。本助成を得て、今回の報告にあるような研究成果を得ることができたが、年度内に論文発表までに至らなかった。しかしながら、本助成の延長を認められたことから、次年度は論文投稿と出版を第一目的とする。また、論文執筆に必要な最終結果を得るまでの補足実験も行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、3年間の研究費助成を受けて本課題の研究を遂行し、最終年度に論文の執筆と専門雑誌への投稿・掲載をする予定であった。しかしながら、当初に計画されながら本年度までに未終了の実験が発生したため、まだ論文執筆が完了しておらず、論文投稿に至っていない。現在、論文の執筆を始めたところで、新年度には完了して投稿する予定である。 1)論文は国際雑誌に投稿する予定である。論文の英文校閲料:100,000円(30頁、これまでの実績から算出);論文の投稿料と掲載料:200,000円(掲載料にはカラー写真代を含む) 2)論文が雑誌に受理されるまでは、実験動物(突然変異マウス)を維持・飼育し、追加実験を行う。飼育料:100,000円(名古屋大学実験動物施設の料金に準じて算出);実験消耗品:100,000円
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