2011 Fiscal Year Research-status Report
トロンボモジュリンの血管内皮保護薬としての臨床応用に向けた分子基盤の解明
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23591421
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
池添 隆之 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (80294833)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | トロンボモジュリン / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
血管内皮細胞上に存在するトロンボモジュリン(TM)は、血液凝固線溶系を制御する重要な蛋白質である。TMは2008年5月に世界初の遺伝子組換えTM製剤(rTM)として発売され、播種性血管内凝固症候群(DIC)治療に広く臨床使用されてきている。本研究者は、豊富な本剤の使用経験の中から造血幹細胞移植後の重篤な合併症を伴う患者において著効例を経験し、本剤は抗凝固作用以外に血管内皮保護作用を有することを世界で初めて見出した。本研究では、この新規なTMの血管内皮保護作用の詳細な機序を検討するとともに血管内皮保護薬としての新たなTM開発を見極めることを目的とした。H23年度の研究で、造血細胞移植時に免疫抑制剤として使用するシクロスポリン(CsA)が臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)にアポトーシスを誘導し、隣り合う血管内皮細胞同士の結合が減弱する結果、血管内皮の透過性を亢進させること、そこにrTMを投与するとアポトーシスからHUVECは保護され、血管内皮細胞の機能も維持されることを証明した。更に、rTMの血管内皮細胞に及ぼす新規作用を検討した結果、rTMはHUVECにおいて、細胞増殖刺激因子ERKを活性化し、抗アポトーシス蛋白Mcl-1の発現を誘導することが明らかとなった。次に申請者は、TMがMcl-1の発現を誘導し血管内皮細胞保護を司る活性部位の同定を試みた。各種TM変異体発現ベクターを構築し変異蛋白質をCOS-1細胞に発現させ、その血管内皮細胞保護作用を検証した結果、Mcl-1の誘導活性はD2ドメインのC末端側のTME45に存在することを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目標通り、トロンボモジュリンが血管内皮細胞保護作用を有すること、その作用機序や活性化部位まで同定できた。
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Strategy for Future Research Activity |
トロンボモジュリンの血管内皮細胞保護作用はEGF-likeドメインのN末端側TME45に存在することが明らかとなった。この部位にはトロンビンとの結合能やプロテインCの活性化能が存在しないため、血液凝固に全く作用しない。即ち、出血の副作用を懸念する必要のない、新規血管内皮細胞保護薬の期待が高まる。今後、トロンボモジュリン変異体TME45を大量に精製し、血管内皮細胞障害動物モデルでその有用性、安全性を検証予定である。既に大腸菌を用いた蛋白発現システムを用いて新規TM変異体の大量精製を試みたが、TM蛋白質はS-S結合が多いためかその立体構造が変化し、インタクトな変異TM蛋白が得られなかった。解決策として、酵母を用いて蛋白を発現精製予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
酵母へ遺伝子導入可能な、トロンボモジュリン変異遺伝子発現システムの構築。酵母を使用したトロンボモジュリン変異蛋白質の大量精製。マウス血管内皮細胞障害モデルを用いて、トロンボモジュリン変異蛋白質の効果と安全性の評価を行う。
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Research Products
(3 results)