2012 Fiscal Year Research-status Report
ビタミンD欠乏症の発症リスクに関する網羅的遺伝子解析
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23591489
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北中 幸子 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30431638)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯島 豪 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00568230)
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Keywords | ビタミンD欠乏症 / くる病 / 疾患感受性遺伝子 / ゲノム / 遺伝子多型 / ビタミンD受容体 |
Research Abstract |
小児期にビタミンDが不足すると、乳児けいれん、O脚、低身長、発達障害などを呈するビタミンD欠乏症を発症する。近年世界的にビタミンD欠乏症が増加していることが注目され、その原因は、主に紫外線不足や栄養など環境因子によると考えられている。我々は本疾患発症には遺伝性素因の関与もあると考え、ビタミンD欠乏症の疾患感受性遺伝子の同定を試みた。 全国からビタミンD欠乏性くる病と診断された症例の集積を行い、ゲノムワイド関連解析により血中ビタミンD濃度との関連が報告された遺伝子多型について解析を行った。正常対照と比較して解析した結果、ビタミンD受容体、ビタミンD結合蛋白、NAD合成酵素の多型に有意差がみられた。ビタミンD受容体については、有意差のあった多型が隣接しており、ハプロタイプでの解析を行った。その結果、4つの多型のハプロタイプを用いると、特定のハプロタイプには、オッズ比5.6(95%信頼限界1.92-16.40)のリスクがあることがわかった。さらに、これらの多型の有無と臨床症状の関連性を検討した。発症年齢、環境要因の数、血中カルシウム濃度、血中25(OH)D 濃度, 血中1,25-dihydroxyvitamin D 濃度について検討を行ったが、いずれも有意差は認められなかった。 このように、ビタミンD欠乏症の発症には、ビタミンD結合蛋白等による血中ビタミンD濃度の低下に加え、ビタミンD受容体の多型が、欠乏による影響を受けやすい体質を生じていることが推察された。さらに、臨床的にビタミンD欠乏症と同様の症状経過を呈する複数の症例において、遺伝子解析により先天性くる病と診断され、遺伝子解析の有用性が判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有用な結果が得られ、学会・論文において発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. ビタミンD欠乏性くる病の症例および正常対照の集積:前年度にひきつづき、症例及び正常対照の検体の集積を行う。 2. 骨代謝関連遺伝子の全遺伝子配列解析:全遺伝子配列解析において、変異が同定された際には、その機能解析を行う。遺伝子多型がアミノ酸コード領域内にある場合は、その遺伝子機能を発現実験などにより転写活性解析、酵素活性解析、受容体機能解析、細胞機能解析を行う。イントロンや発現調節領域にある場合には、転写や翻訳への影響を解析する。 3. 全ゲノムアプローチによる解析:全ゲノムアプローチによるSNP解析を行う。全ゲノムでは有意差が得られない場合は、骨代謝およびビタミンD関連遺伝子に着目して解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究補助者の人件費 ゲノム解析のための物品・試薬費 研究発表のための費用と旅費
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Research Products
(14 results)