2011 Fiscal Year Research-status Report
尿中アンジオテンシノーゲン測定による小児慢性腎炎の新たなバイオマーカーの開発
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23591569
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
漆原 真樹 徳島大学, 大学病院, 特任助教 (50403689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香美 祥二 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (00224337)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | バイオマーカー / 慢性腎炎 |
Research Abstract |
本研究の目的はレニン・アンジオテンシン系(RAS)の基質であるアンジオテンシノーゲンの尿中排泄量が小児慢性糸球体腎炎患者の優れたバイオマーカーであることを証明することである。 学校検尿の普及により小児腎臓病は早期発見、早期治療が可能となった。しかしながら、その一方で治療抵抗性を示し腎不全へと進展する症例もいまだ存在する。近年、RASは全身の血圧や水分調節のみならず腎線維化などの様々な腎障害に強く関与していることが明らかとなった。そして腎臓内で発現するアンジオテンシノーゲンが腎内でのRASの活性化を示していることが証明されている。そのため、腎生検によって診断された小児慢性糸球体腎炎の患者の治療前後での尿中アンジオテンシノーゲンを測定し、腎組織病変の変化との関連を評価する。当該年度は新規に確定診断された小児慢性糸球体腎炎患者にインフォームドコンセントを行い、検体の収集に努めた。徳島大学小児科では年間50例近く腎生検を施行しており、その多くをIgA腎症などの慢性糸球体腎炎が占めている。 これまでに集められた検体でパイロットスタディを行ったところ、健康対照者に比して小児慢性糸球体腎炎患者では尿中アンジオテンシノーゲン排泄量が増加傾向にあり、治療を行った患者ではその上昇が抑制されていた。また、腎生検組織においても尿中のアンジオテンシノーゲン排泄量と同じような傾向がみられており、本研究の仮説に合致した予備データが認められている。 本研究により腎疾患における新たなバイオマーカーを確立することができれば腎不全へと進展する小児難治性腎疾患患者を適切に治療し、新規透析患者を減少させることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究目標は被験者の登録と検体採取およびデータの収集である。そして新規に確定診断された小児慢性糸球体腎炎患者にインフォームドコンセントを行い、検体の収集に努めた。すでに10例以上、同意書がとれ順調にサンプリングが進んでいる。 まず慢性糸球体腎炎患者の尿、血液、腎生検サンプルの採取に関して徳島大学臨床試験審査委員会の承認を得ることに成功した。そして研究者が対象基準に合致(選択基準を満たし、除外基準に合致しない)すると判断した患者(および代諾者)に対して臨床試験審査委員会の承認を得た同意説明文書を渡し、文書および口頭による十分な説明を行い、自由意志による同意を得て、書面でもそれを確認していただいた。被験者となった患者については個人が特定できないように登録した(連結可能匿名化)。名簿は研究責任者がパスワードで保護されたコンピューターを用いて管理している。そして尿と血液を採取して、身長、体重、血圧、電解質、腎機能を測定しそのデータを記録した。 このように当該年度は本研究の初年度であり、研究計画においても被験者の登録と検体の採取およびデータの収集が目的であるため本研究を達成するための準備が出来ていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、被験者の登録と検体の採取およびデータの収集を継続してく。治療が終了した症例に関しては再生検を実施する。初発時と同様に尿中および血中アンジオテンシノーゲンを測定する。臨床データと合わせて尿中アンジオテンシノーゲンとの関連を初発時と同様に検討する。また、同一患者において治療前後で投与薬剤によりどのように変化したのかも考察する。 また、今後はヒト培養メサンギウム細胞を購入し、RASおよび酸化ストレスによる刺激によりアンジオテンシノーゲンの発現がどのように変化するかを検討する。培養容器に播いた細胞が80%コンフルエントになった時点で血清を除いた培養液に交換し、アンジオテンシンIIおよびH2O2で刺激してアンジオテンシノーゲンのmRNAおよび蛋白発現を確認する。そうすることによって臨床データを裏付ける基礎研究データを得ることを目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では患者の尿中および血液中のアンジオテンシノーゲンを測定する。そのためヒトアンジオテンシノーゲン測定用のELISAキットが必要となる。前年度に34,450円の繰越が生じており、次年度の研究費はそのELISAキットとともに組織の免疫染色用の各種抗体や実験のために必要な消耗品(ピペット、器具など)を購入する予定である。また、次年度はヒトの培養細胞を用いる実験も計画しており、そのため培養細胞の購入費と培養容器、PCR試薬、ウエスタンブロット試薬などの消耗品の購入も予定している。
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