2012 Fiscal Year Research-status Report
脳発達におけるセロトニン神経系の役割を胎生期エタノール曝露モデルから考える
Project/Area Number |
23591595
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
福井 義浩 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (50144168)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 ひろみ 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (50294666)
|
Keywords | セロトニン / 脳発達 / ラット / 中脳縫線核 / 5-HT2A/2c受容体 |
Research Abstract |
本研究は脳発達におけるセロトニン(5-HT)の役割を明らかにすることを目的としている。平成23年度は胎生期に5-HT1A受容体を介したシグナルを増強することで胎生期エタノール(EtOH)曝露により生じる5-HT神経細胞数減少を軽減することを明らかにし、胎生期の5-HT1A受容体を介した5-HTシグナルが5-HT神経細胞数の維持する役割を持つ可能性を示唆した。平成24年度は、胎生期EtOH曝露で生じる5-HT神経細胞の発生異常に対する5-HT2A/2C受容体作動薬の効果を調べ、5-HT2A/2C受容体を介したシグナルの脳発達における役割を考察した。SDラットの妊娠10~20日に2.5~5.0% (w/v)EtOH含有液体飼料(Et),またはEtOHを等カロリーのスクロースに置き換えた液体飼料(Pf)を与えた。さらに妊娠13~19日に5-HT2A/2C受容体作動薬である1-(2,5-dimethyoxy-4-iodophenyl)-2-amino-propane (DOI,1mg/kg/day),または生理食塩水(Sal)を腹腔内投与し,Pf+Sal,Pf+DOI,Et+Sal,Et+DOIの4群を作製した。妊娠20日に胎仔を取り出し,中脳縫線核における5-HT神経細胞数の計測および脳内5-HT量の定量を行った。Et+Sal群ではPf+Sal群と比較して5-HT神経細胞数と脳内5-HT量が減少していたが、Et+DOI群では両者共にPf+Sal群と同程度であった。よって、胎生期エタノール曝露で生じる5-HT神経細胞数の減少はDOIによる5-HT2A/2C受容体の活性化で軽減され、その結果5-HT量減少も食い止められる可能性が示唆された。このことは、胎生期の5-HT2A/2C受容体を介したシグナルもまた正常な5-HT神経系の発達を維持する役割を持つ可能性を示している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に5-HT1A受容体を介したシグナル伝達が5-HT神経系発達に及ぼす影響を検討したのに引き続き、平成24年度は5-HT2A/2C受容体を介したシグナル伝達について同様の解析をし、本研究の目的である脳発達における5-HTの役割の検討を行った。これらの成果は既に国内学会で報告しており、平成25年度には更なる成果を加えて国際学会で発表する予定である。また、国際専門誌への投稿準備も進めており、概ね順調に研究が進んでいると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は脳発達期に5-HT受容体を介したシグナルを作動薬投与により増強した場合に、脳内の各種遺伝子発現がどのように変化するのかについて、5-HT神経系の発達障害を有する胎生期エタノール曝露ラットおよび胎生期5-HT合成阻害剤投与ラットを用いて検討する予定である。5-HT1A受容体は自己受容体であり、作動薬投与が5-HT神経細胞そのものの発達に影響を与える可能性はこれまでも報告されてきた。しかし、平成24年度に明らかにした5-HT2A/2Cを介した5-HTシグナルの脳発達への影響、特に5-HT神経そのものの発達にどのような機序で関わっているのかについては不明点が多い。そこで、平成25年度は胎生期のラット脳における5-HT2A/2C受容体を介したシグナル伝達が脳発達に及ぼす影響とその機序についての検討を行うため、ラット胎仔における5-HT2A/2C受容体およびその遺伝子の発現と局在について、免疫組織化学およびin situハイブリダイゼーション等の手法を用いて観察する。また胎生期に5-HT2A/2C受容体拮抗薬を投与したラットで脳の発達を評価する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|