2011 Fiscal Year Research-status Report
21世紀の統合失調症の発症危険率や精神医学的臨床症状の変化に関する調査研究
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23591715
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中根 秀之 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90274795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 悟郎 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00253691)
木下 裕久 長崎大学, 大学病院, 講師 (10380883)
一ノ瀬 仁志 長崎大学, 大学病院, 助教 (60404216)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 精神神経科学 / 社会精神医学 / 統合失調症 |
Research Abstract |
長崎大学においては、これまで1979年、1980年に行ったWHOとの共同研究である「重度精神障害の転帰決定因子に関する研究:DOSMeD」をはじめとした統合失調症発病研究以来の一連の追跡研究実施してきている。すでに、これまで2年、5年、10年、15年の統合失調症転帰研究を行ってきた。28年の長期にわたる転帰調査も完了し、DUPの短縮が超長期にわたる統合失調症の転帰にも影響を与えていることを報告している。しかし、ここ数年の臨床場面において、統合失調症の精神症状の軽症化を主体とした変化が述べられている。また、以前より統合失調症の発症率について、減少、増加あるいは不変といったその推移が議論されている。さらに日本では、1996年以降導入された第2世代抗精神病薬という新たな治療ツールによって、治療の在り方にも変化が生じている。対象統合失調症者がすべて初発であるというような等質な対象であり、国際的にも認知された信頼性と妥当性のある評価法を使用し、海外の研究との比較検討が可能である「初発統合失調症」症例を集積し、以後、臨床転帰、生命転帰を含めた追跡調査の実施を検討している。本研究の大きな目的は、以下の3点である。まず、統合失調症の発症危険率調査であり、2011年に今一度、同じ方法論を用いて、わが国における統合失調症の発症危険率について求め、その変化について検討する。次に、統合失調症の精神症状および生物学的変化として28年前発症の統合失調症症例との比較を行い、精神症状の変化と薬物療法の効果について解析する。最後に、統合失調症追跡データベースの構築を検討している。統合失調患者も参加できアドヒアランス向上にも役立つデータベースのためのインターネット利用によるシステム構築を目指すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、1年目においては、Case Finding Network(CFN)の構築と調査指標(全体的評価、症状転帰、社会的適応など)の選定後、予備調査を開始することとしていた。進捗状況の1.精神医学診断を含めた症状評価・生物学的調査項目の選定。→2.長崎大学医学系倫理委員会に研究計画を提出する。→3.調査票の準備を行い、調査研究トレーニングを2011年6月3-4日に実施した。→4.CFN構築のため協力機関への調査内容の説明。2011年1月より、関係医療機関への協力要請を行う。までが、本年度の計画であった。しかし、3年の限られた期間内に調査を完遂するには、同意取得されない症例の後方視的調査の必要性も考え、予備調査を行わず、本調査を実施することとした。その結果、現在CFNの協力のもと2011年8月よりスムーズに進行している。現時点でCFNからの報告は、50例を超え、面接実施は12例であった。
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Strategy for Future Research Activity |
CFNとの連携が重要であり、今後も継続的に働きかける予定である。特に新年度を迎えるにあたり、CFNに対しては、昨年度の成果について報告し、さらなる協力を呼びかける文書を作成している。これらをもとに初発統合失調症の症例を集め、解析を行う予定である。現時点では、1979-1980年に長崎大学で行ったDOSMED研究で得られた発生率と比較し、若干低い値となることが予想される。しかし、今後各ケースについて詳細な検討を行い発生率、症状等について明らかにしていく。特に同意取得が行えないケースもあることから、漏れのないよう補遺調査を計画している。実施にあたっての準備を継続して行っていく。調査項目については、対象者の負担軽減も考慮し、調査進行の状況から生物学的指標の施行についても検討していく予定である。患者参加によるデータベースの作成可能性については今年度より開始し、検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費については、調査のコーディネートを行う職員の雇用が主体となる。これに加え、本調査における調査票、対象者への謝礼、調査員の人件費および消耗品に使用することが考えられる。調査の進行状況によっては、学会での報告等も検討しているため、旅費も確保することとしている。
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