2012 Fiscal Year Research-status Report
BTG2発現低下による乳癌悪性化および上皮間葉転換・幹細胞増加のメカニズムの検討
Project/Area Number |
23591906
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
高橋 史行 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70327823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奈良 武司 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40276473)
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Keywords | BTG2 / 乳癌 / EMT / 幹細胞 / microRNA / Lapatinib |
Research Abstract |
上皮間葉転換 (EMT)や幹細胞の存在は、乳癌の進展や転移・治療抵抗性に非常に重要である。乳癌においてはCD44+ CD24-細胞集団は自己複製能を持つ幹細胞を多く含む分画であり、これら幹細胞様集団の生成とEMTには密接な関連があることが知られている。またmiR141、200cなどのmicroRNAsは、TGFb2やEMT誘導因子ZEB1の発現を制御し、EMTや幹細胞性維持のメカニズムに重要な役割を演じている。一方、B-cell translocation gene-2 (BTG2)はBTG/Tob蛋白質ファミリーの一員で、Homeodomainを有する転写因子HoxB9のCo-factorとしても機能し、乳腺上皮細胞に高発現している。 我々は本研究においてBTG2遺伝子Knockdownはヒト乳腺上皮細胞であるMCF10AやHMECにおいてEMTを惹起すること、その機序としてはmiR141やmiR200cなどのmicroRNAs発現をほぼ完全に抑制し、TGFb pathwayを活性化させることを見出した。またBTG2 KnockdownはCD44+ CD24-細胞分画も顕著に増加させた。そしてHER2/HER3の活性化やAKT pathwayの活性化も誘導し、In vivoにおいてもH-Ras v12遺伝子を導入したMCF10A細胞のマウス乳腺への同所移植において、BTG2 Knockdownは肺・肝臓・骨髄への遠隔転移を著明に促進し、これらは分子標的治療薬Lapatinibの投与により著明に抑制された。これらについてはOncogene誌に論文発表している。今後はBTG2発現低下による乳腺上皮細胞の悪性化・EMT・幹細胞群増加のメカニズムの更なる解明とこれらの病態に準じた乳癌の治療戦略の構築を目標とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに我々は、BTG2遺伝子KnockdownはIn vitroでヒト乳腺上皮細胞においてEMTや転移に重要なHER2/HER3の活性化やAKT pathwayの活性化を誘導すること、In vivoでもH-Ras v12遺伝子を導入したMCF10A細胞のマウス乳腺への同所移植において、他臓器への遠隔転移を促進し、これらにはLapatinibが奏功することを示し、Oncogene誌に論文発表した。またBTG2遺伝子Knockdownは、miR141やmiR200cなどのmicroRNAs発現をほぼ完全に抑制し、TGFb pathwayを活性化させることでEMTを惹起すること、そして幹細胞集団であるCD44+ CD24-細胞分画も顕著に増加させることも見出している。よって比較的順調に研究は進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
乳腺上皮細胞におけるBTG2発現低下とEMT関連microRNAs発現制御の関連をより詳細に検討し、BTG2遺伝子KnockdownによるEMT発症のメカニズムを検証していく。またBTG2 Knockdownによって誘導される幹細胞様の集団(CD44+ CD24-細胞)をさらに詳細に検討し、これら幹細胞様の集団を標的とした新規の治療法を探索してゆく。我々は、BTG2の重要なBinding partnerであるHoxB9がEMTおよびEMT誘導性の治療抵抗性に関与していることも報告しており、今後はBTG2とHoxB9の相互作用についても解析してゆく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
EMTや幹細胞性解析の実験が主体であるが、実験動物モデルを用いた腫瘍同所移植実験・遠隔転移実験やIn vitroあるいはIn vivoでの抗がん剤治療耐性実験も行う予定である。またBTG2とHoxB9のタンパクレベルでの相互作用の解析も同時に行ってゆく予定である。
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