2011 Fiscal Year Research-status Report
網羅的チロシンキナーゼ解析による胃癌新規治療標的分子の探索
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23591930
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 誠 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50444518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀧口 修司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00301268)
宮田 博志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80362713)
黒川 幸典 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10470197)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 胃癌 / チロシンキナーゼ / 網羅的発現解析 |
Research Abstract |
進行胃癌におけるチロシンキナーゼの遺伝子発現を網羅的に解析し、予後に関連するチロシンキナーゼの同定を行った。その結果、EGFR, Tie2,Her2/Neuの高発現する症例において予後不良となることを確認した。この結果はこれまでの報告と同様であるが、これらのチロシンキナーゼの細胞内シグナル伝達を解析したところ、いくつかの細胞内シグナルに共通点を見出した。その中で、これら膜型チロシンキナーゼの細胞内基質のリン酸化に関連するDOK2という分子を同定した。この分子は血液腫瘍、とくに白血病の分野での研究がされており、細胞増殖のシグナル伝達におけるnegative feedbackに関与し、白血病の発生に関連することがこれまで報告されてきた。そこで、まず臨床検体におけるDOK2の発現と臨床病理学的因子との関連を解析した。DOK2の発現は正常粘膜において全症例で発現を認めたが、癌部においては約半数の症例で発現の低下を認めた。また、低発現する症例においては、有意に予後が不良であり、独立した予後不良因子であることが判明した。予後不良の原因としては、肝転移との関連が示唆された。このDOK2の発現が変化する原因を解析した結果、ゲノム数の変化が関連していることが明らかになり、この分子はhaploinsufficiencyにかかわる可能性が示唆された。このことは胃癌の発がん過程においても大きく関与している可能性があり、ヘリコバクターピロリとの関連との解析なども踏まえることで、癌治療のみならず、胃癌のスクリーニングや予防にも貢献する可能性があると考えるこの結果については、2011年に論文(Annals of Surgical Oncology)に報告した。現在、細胞株における強制発現、発現抑制実験を行っており、シグナル伝達のメカニズムについて解析をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胃癌の予後に関連する風数のチロシンキナーゼのpathway解析から細胞内シグナル伝達に関連する分子の同定を行うことができたこと。また、その分子の発がんとの関連性についても示唆に富む結果が得られたことからおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
DOK2の結果をさらに解析し、胃癌のスクリーニングや治療への応用の可能性を検討する。また、これまでに同定した分子についての臨床病理学的因子との解析およびこれら分子の細胞内でのネットワークの解析、EMTとの関連を推進していく。同時に、分子標的治療の対象となる可能性についても模索していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後も同定した分子の蛋白発現や遺伝子発現、またゲノム変化などの解析に試薬や抗体・プライマーなどの消耗品の使用を要する。本研究の成果を学会活動や論文による報告に研究費を使用する予定である。
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