2012 Fiscal Year Research-status Report
ケモカインCCL21と腫瘍溶解アデノウイルスを用いた新しい癌ワクチン療法の開発
Project/Area Number |
23591973
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
山野 智基 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (00599318)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 秀司 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (10441320)
冨田 尚裕 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (00252643)
大山 秀樹 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (90280685)
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Keywords | 癌ワクチン / 腫瘍溶解アデノウイルス |
Research Abstract |
本実験は制限増殖型アデノウイルスを用いるため、文部科学大臣確認実験に相当する。平成23年12月1日付けで文部科学大臣より確認通知を受領し(23受文科振2141号)、その後平成24年2月17日に兵庫医科大学で本実験を行うための動物実験計画書、遺伝子組み換え実験計画書を提出、平成24年6月21日に実験許可を得た。 本実験で用いる制限増殖型アデノウイルスはマウス細胞への感染効率が低い可能性があるということで、動物実験に入る前に再度マウス大腸癌細胞株CMT93とCT26で感染効率を検討した。どちらの細胞にもウイルス濃度依存性に殺細胞効果が見られたが、CMT93細胞の方が低濃度で殺細胞効果があり、同じウイルス濃度でも殺細胞効果がCT26細胞よりも高いことが分かった。そのためCMT93細胞を用いて動物を用いたワクチン実験を行うことにした。 CMT93細胞はC57/BL6由来であるため、C57/BL6にCMT93細胞を皮下接種したが腫瘍を全く形成しなかった。CMT93細胞は付着性が強い一方で、浮遊状態にした場合に細胞生存率が低下することが危惧された。実際、培養液のFBS濃度を通常の10%から1%に減らして継代した場合、ヒト大腸癌細胞株HCT116では細胞生存率は落ちるものの継代可能であったがCMT93細胞では細胞が死滅して継代出来なかった。無血清培地(OPTIMEM)では継代可能なことは確認したのでPBSの代わりに無血清培地を用いて皮下腫瘍が形成出来ると考えて今後の実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本実験は制限増殖型アデノウイルスを用いるため、文部科学大臣確認実験に相当する。平成23年12月1日付けで文部科学大臣より確認通知を受領し(23受文科振2141号)、その後平成24年2月17日に兵庫医科大学で本実験を行うための動物実験計画書、遺伝子組み換え実験計画書を提出、平成24年6月21日に実験許可を得た。従って動物実験可能となるまでに科研費内定後1年以上掛っている。従って書類の作成、事務手続きに時間が掛ったのが研究が遅れた最大の原因である。 またin vitroでマウス大腸癌細胞であるCMT93細胞とCT26細胞でのウイルス感染実験を行ったが、初年度の結果と異なりCMT93細胞の方がCT26よりも明らかに感染効率が高く、殺細胞効果が高かった。そのためCMT93細胞をワクチン実験に用いることにしたが、これまでの報告を元に300万個を皮下接種したが腫瘍形成が見られなかった。そこで500万個に増やして再度皮下接種したがやはり腫瘍形成が見られなかった。CMT93細胞はATCCで購入可能な細胞であるが、動物実験に用いた報告は極少数しかない。同様にATCCから購入可能なCT26を用いた動物実験がマウス由来大腸癌細胞を用いた報告のほとんどである。CMT93細胞の腫瘍形成能がCT26に比べて明らかに低いため研究に用いられていないためであると予想して準備を進めるべきであった。細胞培養実験で検討すると培養液のFBSを10%から1%に減らすと細胞の継代が不可能なことからPBSを細胞溶解に用いて皮下接種すると細胞生存率が著しく低下してしまうことが腫瘍形成能が悪い原因と考えられた。無血清培地であるOPTIMEMでは継代可能であるため、OPTIMEMで細胞を溶解することで腫瘍形成能の向上が可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
CMT93細胞の皮下腫瘍形成能が低いことが本研究の進んでいない最大の原因である。細胞培養実験から浮遊状態では血清が十分に無いと細胞生存率が著しく低下することが分った。従ってPBSで細胞を希釈するのではなく、継代可能であることを確認した無血清培地を用いて希釈して皮下接種することで、皮下腫瘍形成能が向上すると考えている。無血清培地でも腫瘍形成能が向上しなければ、通常の培養液で希釈して皮下腫瘍が形成出来るかを検討する。 当初は腫瘍を形成した状態でワクチン効果を調べる治療ワクチンモデルを行う予定であったが、in vitroでウイルス感染させたCMT93細胞を癌抗原と考える予防ワクチンモデルを行う。腫瘍にウイルス感染させる場合に比べて感染効率を調整出来るので、ワクチン効果が出易いと考えている。Calreticulinについては抗腫瘍免疫に関して重要な分子と考えられるので、フローサイトメトリーを用いてCalreticulinの細胞表面への移動を検討する。この際にオキサリプラチンをポジティブコントロールとして用い、イリノテカンはネガティブコントロールとして用いる。これらの抗癌剤を用いる研究は並行して行っているのでこの検討は比較的容易に出来ると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
動物実験に用いる動物購入に最も研究費が掛かる。最初に100%近くのマウスが皮下腫瘍を形成する条件を検討する。ワクチンは治療モデル(腫瘍形成後にワクチンを開始し抗腫瘍効果を検討)ではなく予防モデル(腫瘍無しの状態でワクチンを行いその後に腫瘍細胞を接種し腫瘍形成の有無を確認)を行う。 最初にウイルス感染CMT93細胞を皮下接種して腫瘍が形成されないウイルス濃度を検討する(10匹×ウイルス濃度(3種)×2回=60匹)。次にウイルス感染により腫瘍を形成しないことが分かっているウイルス感染CMT93細胞を接種後のマウスに、ウイルス感染していないCMT93細胞を接種して腫瘍形成の有無を確認する。ワクチンが成立していなければCMT93細胞接種で腫瘍が形成される。10匹×3パターン(細胞接種なし=ワクチンのネガティブコントロール、ウイルス感染細胞を接種、オキサリプラチン投与後の細胞を接種=ワクチンのポジティブコントロール)×3回=90匹のマウスが必要である。ウイルス感染のみでポジティブコントロールと同様に十分なワクチン効果が見られればアジュバントは不要であるがワクチン後に腫瘍形成が見られる場合はアジュバントとしてCCL21を用いる。これまでの研究でCCL21をワクチン前に投与した方が効果が見られたので、ウイルス感染細胞を打つ予定の部位、投与24時間前にCCL21を投与する。 Calreticulinについてはフローサイトに適した抗体、免疫染色に適した抗体を購入しフローサイトメトリーと細胞の免疫染色でウイルス感染に伴うCalreticulinの局在変化を検討する。
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