2011 Fiscal Year Research-status Report
心筋虚血再灌流後の好気的代謝復活による心筋傷害:二酸化炭素産生とカルシウム過負荷
Project/Area Number |
23592023
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
山本 浩史 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10270795)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 文雄 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00127474)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 心筋虚血再灌流傷害 / 好気的代謝 / CO2産生 |
Research Abstract |
開心術中心停止による心筋虚血再灌流傷害の主病態は再灌流時細胞内Ca2+過負荷であり、その原因は虚血中の細胞内アシドーシス(H+産生)がNa+/H+交換によるNa+流入、さらにNa+/Ca2+交換を介するCa2+流入を来すとされている。しかし虚血中にはNa+/H+交換は抑制されており、H+濃度は1μM程度(pH=6)と低く、再灌流時にNa+/H+交換を介して過負荷に至るようなmMオーダーのNa+流入を引き起こすことは考えにくい。「再灌流時の好気的代謝復活による急激なCO2産生がmMオーダーのH+産生を生じさせ、Na+/H+交換を介するNa+流入を生じさせ、細胞内Ca過負荷に至る」という仮説を立て、新しい心筋保護法の開発に資するため、再灌流時好気的代謝中のNa+濃度測定と関連機能蛋白定量によって心筋傷害メカニズムを明らかにすることを目的とした。具体的目標の一つ目は「ラット摘出灌流心モデルにおいて虚血再灌流モデルを作成し、虚血中および再灌流時における細胞内イオン濃度を検討する」であった。この検討の前に開心術中の血液心筋保護液注入中に冠静脈洞からサンプルを採取し、酸素含量、Na+濃度、K+濃度、Cl-濃度、HCO3-濃度、pHを測定し、再灌流時の酸素化時にイオン移動を示唆する所見が得られるかどうか検討した。結果は酸素消費とともにNa+増大、K+低下、Cl-低下、HCO3-濃度不変、pH低下が認められイオン移動の存在が強く示唆された。また具体的目標の二つ目は「Na+/H+交換の関与に関しNa+/H+交換抑制薬を用いて検討する」であった。ラット摘出潅流心モデルではNa+/H+交換抑制訳である、アミロライドが虚血後の再酸素化時(無酸素再灌流後の酸素化灌流)に投与されると心筋保護的に働くことから、Na+/H+交換が好奇的代謝の復活の際にイオン移動に大きくかかわっていることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞内イオン濃度測定装置を用いて虚血再潅流中の細胞内イオン濃度(Na+、Ca2+、pH)を評価可能にすることが、平成23年度の目標の一つであったが、精度的に測定法に困難な点があり、現在、解決策を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.好気的代謝の関与に関し好気的代謝抑制(ミトコンドリア抑制)薬を用いて検討する。ラット摘出灌流心モデルにおいてミトコンドリア抑制のための代謝阻害薬、低酸素によって再灌流中の細胞内Na+濃度、細胞内Ca2+濃度、細胞内pHがどのような影響を受けるかを、細胞内イオン濃度測定装置を用いて評価する。またCO2電極を用いて組織CO2分圧を測定する。2.Na+イオン輸送系(Na+/K+ポンプ、Na+/Ca2+交換、Na+/HCO3-共輸送、Na+チャネル)の関与を検討する。ラット摘出灌流心モデルにおいて他のNa+イオン輸送系を阻害する薬剤を用いて再灌流中の細胞内Na+濃度、細胞内Ca2+濃度、細胞内pHがどのような影響を受けるかを、細胞内イオン濃度測定装置を用いて評価する。またCO2電極を用いて組織CO2分圧を測定する。3.再灌流中のcarbonic anhydrase活性、Na+/H+交換機構蛋白の発現と活性を検討する。ラット摘出灌流心モデルにおいて再灌流中にcarbonic anhydraseが関与する反応(CO2+H2O→HCO3-+H+)においてcarbonic anhydrase活性とNa+/H+交換機構活性の関連性を分子生物学的に検討する。次年度使用額が生じた状況:研究の進展が遅延しており、必要物品の購入が次年度になったため。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分子生物学的検討の準備に研究費を使用する。安定して機器が使用できるかどうか検討すること。そしてラット摘出灌流心モデルで再灌流中にcarbonic anhydraseが関与する反応(CO2+H2O→HCO3-+H+)においてcarbonic anhydrase活性とNa+/H+交換機構活性の関連性を明らかにするための準備実験を行う。
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