2011 Fiscal Year Research-status Report
骨髄単核球細胞移植による肺高血圧症治療の際の移植細胞の果たす役割
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23592040
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
中山 泰介 徳島大学, 大学病院, 医員 (80582791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 哲也 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (80240886)
菅野 幹雄 徳島大学, 大学病院, 特任助教 (70563807)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 肺高血圧 / 骨髄単核球移植 / マウスモデル |
Research Abstract |
〔意義〕肺血管性肺高血圧症は様々な原因で起こりうるが,臨床的には非常に重篤であり,一旦発症すると非常に予後が悪いことが知られている.肺高血圧に対する血管新生療法はこれまでに試みられているが,その効果や血管新生機序については未だに一定の結論に至っていない.そこで我々はマウスmonocrotaline誘発肺高血圧モデルにおいて経静脈的な骨髄単核球細胞移殖が肺血管床の改善をもたらす可能性について検討し,またその移植細胞が肺高血圧症改善に果たす役割を検討した。〔方法〕8週齢雌性C57/BL6マウスに対してmonocrotaline 80mg/kgを腹腔内投与し4週間経過させ肺高血圧モデルを作製した.これに対して同種骨髄単核球を分離し,10-7個/0.25mlに調整し眼窩静脈より静注し4週間後に解析した.それぞれシャム群(S群),肺高血圧コントロール群(PH群),細胞移殖群(C群),の3群にて検討した.肺高血圧の解析については心エコーを用いた肺動脈血流波形の解(AT/ET:acceralation time/ejection time)及び右室/左室心筋重量比を計測することにより行った.〔結果〕AT/ETはS群で0.363±0.034,PH群で0.277±0.009,C群で0.352±0.008,であった。C群でPH群に対してそれぞれ有意差を認めた.(C群:p<0.001)また右室/左室心筋重量比はS群:0.245±0.033,PH群:0.341±0.036,C群:0.274±0.041であった.同じくC群でPH群に対し有意差を認めた.(C群:p=0.026)〔結語〕我々の肺高血圧モデルでは骨髄単核球細胞移殖により肺高血圧が改善させられた.今後はその移植細胞の動態について解明していく方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずは肺高血圧モデルマウスの作成、骨髄単核球の分離・精製並びに実際に肺高血圧モデルマウスの症状改善が可能かという検証を行っている。〔モデルマウス作成〕これまでに行った実験を踏まえ、C57/BL6マウスを用いてmonocrotaline80mg/kgを腹腔内投与することで概ね肺高血圧マウスが完成した。右室心筋重量比において有意な上昇が確認でき、また組織所見でも肺動脈中膜の有意な肥厚が確認できた。加えて心エコーを行うことによる評価も併せて行ったが、通常では,monocrotaline投与より4週間後では肺高血圧が完成しているとのこれまでの評価であったが、心エコーにて経時的に精査を行うことにより、約1週間で概ね肺高血圧と言えるレベルにまで心エコー上の所見が変化してきていることが分かった。〔単核球の分離・精製〕同種の雄性マウスの大腿骨骨髄などから骨髄細胞を採取し、遠心・濃縮を繰り返し1×107個/0.25mlという濃度とすることができた。この細胞懸濁液についてはマウスの眼窩静脈より投与しているが、投与経路、投与量などからも1個体20g程度のマウスに投与するのに適した量であると判断でき、また投与による合併症なども特に認められずほぼ全個体が生存できた。〔肺高血圧の改善〕monocrotaline投与から4週経過し肺高血圧が完成した段階で単核球を投与したが、前述の右室心筋重量比や中膜肥厚度、心エコー上の評価のすべてにおいて肺高血圧所見が有意に改善していることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
骨髄単核球のマウス体内での動態についての解明を進めていく。特に実際にどの部位に生着し作用するのかについてはイメージング装置などを用いることにより移植細胞の行方を検討することとしている。具体的には移植予定の骨髄細胞をDi-I(カルボシアニン蛍光)にて染色しておき、移植直後、1日後、1週間後と経時的にレシピエントマウス肺内および全身臓器(脳、肝臓、脾臓、腎臓、肺、心筋及び骨髄)、血液中での移植骨髄細胞の存在、動態を確認する。また、骨髄単核球の放出するサイトカイン(IL-8、IL-1β、IL-6など)については投与後に経時的に血中濃度を測定することにより検討可能であると考えている。また最終時には肺組織を含む各臓器中のサイトカイン値などを測定し、動態の解明に役立てることを予定している。また、現在は1×107個/個体という細胞数を投与しているが、他の細胞数にても検討を加え、実際の臨床使用の際のモデルに即した有効濃度あるいは有害事象の有無などについても更に精査を加えていくこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
移植細胞の行方を調査するためには、昨年度同様にマウスを100~200匹使用する他、各種抗体を用いた組織染色並びにサイトカイン等の測定、心エコーを施行する際に必要な消耗器具、イメージング装置使用にかかる諸物品等が必要になる見通しです。次年度以降に高額の機器を購入する可能性があるため繰り越し。
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Research Products
(7 results)