2011 Fiscal Year Research-status Report
胎生期肺組織移植による肺気腫治療の実験的検討 -豚肺気腫モデルを用いて-
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23592062
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
先山 正二 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (60291986)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
監崎 孝一郎 徳島大学, 大学病院, 講師 (70325265)
川上 行奎 徳島大学, 大学病院, 特任講師 (00596249)
滝沢 宏光 徳島大学, 大学病院, 講師 (90332816)
鳥羽 博明 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (40403745)
宇山 攻 徳島大学, 大学病院, 医員 (90437658)
吉田 光輝 徳島大学, 大学病院, 助教 (30403710)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 肺の再生 / 胎生期肺組織 / 肺移植 / 肺気腫 / 豚 |
Research Abstract |
これまで胎生期肺組織に着目した,胎生期肺組織移植による肺組織再生・修復に関する実験的検討をラット、マウスおよび豚を用いて行ってきた。胎生期肺組織片が成体肺への移植により生着し、分化するのは、胎性期肺組織のもつ次の特徴が関係していると考えられる。すなわち1) 肺への分化の方向付けがなされている,2)増殖能が旺盛である,3)いわゆる"足場"となる間質組織が含まれている点である。移植後胎生期肺組織内に多く認められる立方状細胞は扁平化し、I型様肺細胞が増え、postnatal lungに類似した組織形態を示すようになる。病的肺に対して胎生期肺組織を移植した場合に、正常成体肺に移植した場合と同様に移植胎生期肺組織が生着しえるかどうかは次のステップとして検討すべき重要な課題である。ラット肺線維症モデルでは移植した胎生期移植肺は肺内に生着し、移植肺でのTTF-1とCCSPの発現を指標として肺の分化をみると、経時的に両者の発現は増加し、CCSPは主に気管支や細気管支に、TTF-1は細気管支から肺胞領域に発現を認めた。pallidマウス肺気腫モデルでは、GFP-C57BL/6マウスの胎生期肺を,肺気腫を生じたpallidマウスに移植すると、肺気腫肺においても移植組織片の生着を認めた。豚における検討では、豚胎仔肺組織を採取し、DMEM培地で細切し、移植用胎仔肺組織液を準備した。胎仔肺組織液を全身麻酔下の成体豚肺に開胸下に移植を行った。肺表面より肺実質内に,胎仔肺組織浮遊液を数カ所に注入した。移植後にサイクロスポリンによる免疫抑制を行った。移植した胎仔肺移植組織は肺内に生着したが、小動物の場合より壊死に陥っている部分も多く認めた。現在、病的肺としての肺線維症モデルの作成中である。豚の実験を遂行してゆく過程で生じる技術的問題点の解決のために、適宜ラットやマウスを用いた予備実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで我々が行ってきた、ラットやマウスで得られた知見を踏まえた豚での研究であるが、小動物の結果をそのまま大動物に挿入しがたい問題点がいくつか見つかった。この点に関しては究極的には本研究のコンセプトを臨床での応用の可能性探るものであり、本研究を通して浮かびあがる問題点はむしろ有用な情報であと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1年間の今回の研究を通して、豚での実験を進めて行く過程において生じた問題点を、ラットやマウスを適宜用いて問題解決の糸口を探る方法は有用であると思われた。従って、今年度においても、この方法を用いて豚での実験を遂行してゆく予定である。特に、エラスターゼによる肺気腫モデルの作成においては、投与量と生じる肺気腫の組織像との関連をみるには、まずラット持いたパイロット研究と豚での研究を適宜組み合わせて行うことで時間と経費の効率的活用が可能であると考えている。 これまで、胎性期肺移植というコンセプトで行ってきた一連の研究に協力関係にあった病理医との引き続く協力体制を維持することで、研究の精度を担保してゆく予定である。 最近、当大学の実験施設の環境、支援体制はより一層充実してきており、大動物での実験の遂行に適した環境であるといる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
胎仔肺組織をエラスターゼ誘発気腫肺に開胸下に移植し,移植肺の生着,分化,増殖能を検討する。 a) エラスターゼ誘導肺気腫の作成:全身麻酔下に気管支鏡下に,レシピエント豚(体重約25kg)の左肺にエラスターゼを経気道散布する。噴霧には当科において開発した気管支鏡のチャンネル孔より噴霧カテーテルを挿入し,左肺気管支内にエラスターゼを散布する。 b)肺気腫の評価:エラスターゼ処置後1,2,3カ月後に左肺の生検と呼吸器機能(肺コンプライアンス,左肺の酸素化能等)の測定を行う。実験に共用する至適時期を検討する。 c)移植胎仔肺組織の気腫肺への移植:全身麻酔下に妊娠豚を犠牲死させ,胎齢80日の豚胎仔肺組織を採取する。採取した末梢肺組織をDMEM培地で細切する。18ゲージ針を通して細切した移植用胎仔肺組織液を準備する。胎仔肺組織液を全身麻酔下(気道内挿管,GOS+Pbr麻酔)の生体雌性豚の左肺に開胸下に移植する。肺表面より肺実質内に,胎仔肺組織浮遊液を左肺に3mlずつ左前葉(ヒト上葉に相当),後葉(ヒト下葉に相当)の各10か所に注入する。注入した箇所の目印として各注入部位の胸膜直下にバリウムマーキングを行う。 d) 移植肺でのガス交換能および肺コンプライアンスの測定:レシピエントは移植後4,12および24週後に全身麻酔人工呼吸管理下に開胸し,左主肺動脈,左前葉静脈,左後葉静脈および大動脈より採血し,血液ガス分析を行う。また、分離換気下で左肺のコンプライアンスを測定する。 *豚の実験を遂行してゆく過程で生じる技術的問題の点の解決のために、適宜ラットやマウスを用いた予備実験を行う。
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Research Products
(2 results)