2012 Fiscal Year Research-status Report
水溶性ビタミンE誘導体による外傷性てんかん発症予防の実証的研究
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23592099
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
横井 功 大分大学, 医学部, 教授 (80150366)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 敬明 大分大学, 医学部, 教授 (20211196)
徳丸 治 大分大学, 医学部, 准教授 (40360151)
西田 育弘 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 教授 (90172668)
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Keywords | 外傷性てんかん / 外傷性てんかんモデル / てんかん焦点形成予防 / ラジカル消去剤 / ビタミンE誘導体 / 酸化ストレス / ラット脳波 / 発作脳波活動 |
Research Abstract |
本年度の研究では,ヘモグロビン(Hb)を使用して,より臨床病態に近い外傷性てんかん(PTE)モデルラットを作成し,活性酸素消去効果と抗炎症作用を持つジヒドロリポイル-ヒスチジン亜鉛キレート化合物(DHL)のPTE焦点形成予防効果を検討した.すなわち、雄SDラットの大脳皮質運動野内にHb溶液を5μl(Fe量約45nmol)注入し、硬膜外電極で脳波を記録した.生理食塩水を注入し対照飼料(MF)で飼育する対照群,DHLを0.25%含む餌料で飼育(DHL摂取量約100 mg/kg/day)するHDL群、及び、Hbを注入してMFで飼育するHb群とDHL餌料で飼育するHb+HDL群で脳波変化に対する影響を検討した. 検討の結果、4群のラットの摂食量,飲水量,体重変化に7ヶ月後にも差は認められなかった。HDL群の脳波には高振幅速波成分の出現が増加した。半数のHb群ラットには7ヶ月後にもinterictal spikes様脳波変化が継続していた。また、Hb+HDL群では約67%のラット脳波に発作性異常波が認められた。このため、HDLではPTE発症を予防することは困難なことが明らかとなった. さらに、DHLはTBARS法によりED50:0.69mMで抗酸化能を有すること、ESR法でDPPHラジカル(ED50:0.14mM)、カーボンセンタードラジカル(ED50:21mM)、スーパーオキサイドアニオン(UV法で発生、ED50:2.1mM)、ビタミンCラジカル(松本法で発生、ED50:2.1mM)を消去することがわかった。しかし、UV法で発生させたメチルラジカルは消去せず、1mM以上の濃度では UV法で発生させるヒドロキシルラジカル量をCYPMPOトラップ法でもDMPOトラップ法でも増加させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
入手可能で活性酸素種消去作用が期待できるジヒドロリポイル-ヒスチジン亜鉛キレート化合物にて検討を行ったが、満足のいく結果が得られなかったため。 PTEの発症によりラット脳波には発作性異常波が出現するが、これを予防することが出来なかった。このため、抗酸化能やラジカル消去能を6種類のラジカルと8種類の方法で検討した。しかし、チオバルビツール酸反応物質法により抗酸化能は証明できたものの、ラジカル消去能の検討では有効・無効ばかりでなくラジカル発生量を増加する可能性も示唆され、ラジカル種により共通した結果を得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
モデルラットの作成法は平成23年度と同様に行う.当初の計画通りビタミンE,グルタチオン,タウリンをマレイン酸で結合した化合物である水溶性ビタミンE誘導体ETS-GSを合成し、これを投与してヘモグロビン注入外傷性てんかんモデルラットの脳波変化やけいれん発作発症に対する予防効果を調べる。また、Hb溶液注入後1日,3日、7日、1月、3月目にラットを断頭し,大脳皮質を取り出し,脳サンプル内のヒドロキシルラジカル量をCYPMPOスピントラップ法を使用して、ビタミンCラジカル量をDMSO添加法を使用して電子スピン共鳴(ESR)装置で測定することにより、Hb投与後の脳内酸化還元状態の変化に対するETS-GSの影響を検討することにより新予防薬候補を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度にはα―トコフェロールなどの原料からETS-GSを合成する。モデルラットの作成は平成23年度と同様に行い、作成したETS-GS含有飼料をモデルラットに投与し、脳波や行動変化に対する影響検討する。また、モデルラット脳内のチオバルビツール酸反応物質(TBARS)量を分光法により、ヒドロキシルラジカル量やビタミンCラジカル量をESR法で測定して脳内レドックス状態に対する影響を検討する。また、NMR法を用い脳内エネルギー代謝に対する影響も調べる。これらのことからETS-GSの外傷性てんかん焦点形成予防効果を調べる。さらに、ETS-GS分子中のタウリンを他のアミノ酸に置換した化合物も合成し、これらの物質の活性酸素種消去能や脳内エネルギー環境に対する影響も解析する。
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Research Products
(10 results)