2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23592276
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 伸子 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80332609)
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Keywords | 脂質 / 神経科学 / 疼痛学 |
Research Abstract |
生体内で様々な刺激により瞬時に産生される生理活性脂質の中でも、強力な白血球活性化作用を持つロイコトリエンB4(LTB4)とその高親和性受容体BLT1が、急性痛に対してどのように関与しているのか、BLT1遺伝子欠損マウスとその野生型マウスを用いて研究を進めた。平成23年度に行ったホルマリン及びカプサイシン足底注入による急性痛モデルでの行動解析では、野生型と比較してBLT1遺伝子欠損マウスにて有意に疼痛行動が減弱していることがわかった。2つの急性痛モデルで、脊髄内反応分子にどのような変化があり、BLT1遺伝子欠損と野生型でどのような違いがあるかについて、免疫染色により解析した。ホルマリン足底注入60分後及びカプサイシン足底注入20分後の脊髄後角にて、急性期反応分子であるpCREB(リン酸化cAMP応答配列結合タンパク)陽性シグナルが増加していた。このpCREB陽性シグナルは野生型と比較しBLT1遺伝子欠損マウスにて有意に減弱しており、LTB4-BLT1シグナルが脊髄において急性期反応分子に影響していることがわかった。これらの結果は平成24年8月に国際学会(14th World Congress on PAIN)にて発表した。 さらにBLT1受容体拮抗薬の急性痛に対する効果について、野生型マウスを用いて検討した。BLT1受容体拮抗薬ONO4057を腹腔内投与し、15分後にホルマリン足底注入を行ったところ、生食投与群と比較して有意に疼痛行動が減弱していた。また、腹腔内投与のみならず、足底注入、足底塗布という投与経路でも疼痛行動は有意に減弱した。この効果はカプサイシン足底注入モデルでも認められ、BLT1拮抗薬の急性痛における有効性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
急性痛モデルにおける足底、及び脊髄、後根神経節におけるロイコトリエンB4やその他の生理活性脂質の同定と定量についての解析が、網羅的解析が可能である最新の質量分析施設の学内での移動により稼働が遅れており、未施行である。実験室周囲で大規模建設工事が始まり、他の拮抗薬や、ロイコトリエン類産生酵素阻害薬を用いた行動実験、髄腔内投与後の行動実験が、騒音のために実行できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ホルマリン足底注入、カプサイシン足底注入により、TRPA1,TRPV1という感覚神経特異的に発現する受容体が活性化されることが知られており、LTB4がこれらの受容体を直接活性化もしくはLTB4-BLT1シグナルにより活性化する可能性が示唆される。このことから、BLT1遺伝子欠損がTRPA1 及びTRPV1受容体発現に影響しているかどうか解析する。 急性痛モデルでの局所及び脊髄におけるLTB4の定量を進める。 防音室設置を申請し、適切な環境下で他の拮抗薬やロイコトリエン類産生酵素阻害薬の疼痛行動への効果を解析する。 神経因性疼痛モデルを作成し、BLT1遺伝子欠損が疼痛行動を減弱させるかどうか、解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として、受容体拮抗薬、免疫染色、RT-PCRのための試薬購入と、スライドグラス等の消耗品の購入に使用する。
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Research Products
(2 results)