2013 Fiscal Year Annual Research Report
非侵襲的脳内グルタミン酸、GABA測定による痛みの脳機能評価法の確立
Project/Area Number |
23592284
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
福井 聖 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (80303783)
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Keywords | MRスペクトロスコピー / Nアセチルアスパラギン酸 / 慢性腰痛 / 前帯状回 / Voxel-based morphometry / GABA |
Research Abstract |
慢性腰痛の病態では、遷延する痛みに加えて、強い不安や不快感が症状を増悪している場合も少なくない。前帯状回は、不快情動の処理に関連する重要な脳領域であり、不安障害やパニック障害などの病態では、その解剖学的構造や伝達機構に変調をきたす可能性が報告されている。MRスペクトロスコピーを用い、慢性腰痛患者の前帯状回における脳内代謝物を測定し、その機能的変化を明らかにすることを目的として疾患での研究を行った。 NRS4以上かつ罹患期間6カ月以上の21人の慢性腰痛患者を対象とし、年齢、性別が相関する27人の健常被験者を対照群とした。 正常神経細胞の指標となるNアセチルアスパラギン酸(NAA)、グリア細胞活性化の指標となるミオイノシトール(MI)、興奮性伝達物質であるグルタミン酸(Glu)、抑制性伝達物質であるガンマアミノ酪酸(GABA)の濃度を測定し、LCモデルを用いて解析した。またMRS測定時に、慢性腰痛患者に同時にVBM(Voxel-based morphometry)を施行し、有意な灰白質密度の低下領域を調査した。VBM はSPM8を用いてDARTEL法による解析を行い、各年代89人~118人の健常人で得られた正常値と比較した。 慢性腰痛患者では健常被験者と比べNAAおよびGABAが有意に低下していたが、MIおよびGluは有意差を認めなかった。非異的腰痛では58%で、特異的腰痛では7%にVBMに有意な灰白質密度の低下を認めた。低下領域は、扁桃体が最も多く、扁桃体z値とPDAS, HADSのDに相関を認めた。また左扁桃体z値とPCSサブスケールの反芻に弱い相関を認めた。 慢性腰痛の病態では、前帯状回における正常神経細胞が減少し、抑制性の神経伝達機能の低下が生じる可能性が示唆された。1H-MRS,VBMは、慢性腰痛患者の非侵襲的な評価手段の一つとなる可能性が示唆された。
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Research Products
(9 results)