2012 Fiscal Year Research-status Report
Dセリン代謝関連酵素とモルヒネ鎮痛耐性形成との関連に関する研究
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23592312
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
伊藤 健二 東海大学, 医学部, 講師 (10317779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 正信 東海大学, 医学部, 准教授 (90276791)
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Keywords | Dセリン / モルヒネ / 鎮痛耐性 / 代謝 |
Research Abstract |
申請者らは、Dセリンがグルタミン酸受容体の一つのN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体の内因性リガンドであることを初めて明らかにした。これまでに、疼痛の下行性抑制系路においてグルタミン酸が関与することを示唆する知見があるが、不明な点が多い。本研究では、NMDA受容体の選択的な内因性リガンドであるDセリンを用いて、疼痛の下行性抑制系路におけるNMDA受容体の機能を明らかにすることを目的として、Dセリンをラット第三脳室内に投与し、Tail-Flick法にて抗侵害効果について解析した。その結果、1. Dセリンの脳室内投与によって、用量依存的に抗侵害効果が観察され、この効果はDセリンの作用点であるNMDA受容体グリシン結合部位の拮抗薬L-701,324によって拮抗された。2. Dセリンはモルヒネの抗侵害効果を相加的に増強し、この増強効果はL-701,324によって拮抗された。3. Dセリンの抗侵害効果はオピオイド受容体の非選択的拮抗薬ナロキソンによって拮抗された。4. L-701,324(137 nmol)単独投与により、hyperalgesiaが観察された。これらの結果より、Dセリンは脳内のNMDA受容体グリシン結合部位を介して、オピオイド受容体を刺激し鎮痛作用を示すことが示唆された。5. 鎮痛効果が現れた用量では行動異常(運動神経抑制、睫毛反射、耳介反射、アロディニア)や鎮静効果が現れないことを確認した。すなわち、Dセリンは疼痛の下行性抑制系路を亢進し、鎮痛作用を有することが明らかとなった。また、脳内のNMDA受容体グリシン結合部位が鎮痛薬としての作用点となりうる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はDセリンの疼痛および鎮痛に関する知見を得るためDセリンの脳内における鎮痛効果および鎮静効果などを検討した、その結果1. Dセリンの脳室内投与によって、用量依存的に抗侵害効果が観察され、この効果はDセリンの作用点であるNMDA受容体グリシン結合部位の拮抗薬L-701,324によって拮抗された。2. Dセリンはモルヒネの抗侵害効果を相加的に増強し、この増強効果はL-701,324によって拮抗された。3. Dセリンの抗侵害効果はオピオイド受容体の非選択的拮抗薬ナロキソンによって拮抗された。4. L-701,324(137 nmol)単独投与により、hyperalgesiaが観察された。これらの結果より、Dセリンは脳内のNMDA受容体グリシン結合部位を介して、オピオイド受容体を刺激し鎮痛作用を示すことが示唆された。5. 鎮痛効果が現れた用量では行動異常(運動神経抑制、睫毛反射、耳介反射、アロディニア)や鎮静効果が現れないことを確認した。よって、本年度はほぼ計画どおりの進捗状況と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はモルヒネの鎮痛効果および鎮痛耐性形成機序に対するDセリンの効果について検討する、すなわち、モルヒネ長期投与により鎮痛耐性が形成されたラット、あるいはDアミノ酸酸化酵素欠損マウスなどを用いて、Dセリンの代謝関連遺伝子発現、タンパク質発現、Dセリン濃度とモルヒネ鎮痛耐性の形成程度との関連性について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
モルヒネ長期投与により鎮痛耐性が形成されたラット、あるいはDアミノ酸酸化酵素欠損マウスなどを用いて、Dセリンの代謝関連遺伝子発現、タンパク質発現、Dセリン濃度の検討に要する研究費を使用する予定である。
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