2011 Fiscal Year Research-status Report
下部尿路におけるTRPV4を介した伸展刺激による尿意のメカニズムの解明
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23592361
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
望月 勉 山梨大学, 医学工学総合研究部, 医学研究員 (50377496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中込 宙史 山梨大学, 医学部附属病院, 診療助教 (80418714)
芳山 充晴 山梨大学, 医学工学総合研究部, 医学研究員 (20422694)
武田 正之 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (80197318)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | TRPV4 / 膀胱上皮 / メカノセンサー / 求心性シグナル伝達 / ATP / 蓄尿障害 |
Research Abstract |
(膀胱上皮培養細胞の伸展刺激実験):膀胱上皮初代培養細胞を適宜作成し、培養細胞伸展刺激装置を用い、カルシウムイメージング上で機械伸展刺激に対する細胞内カルシウム濃度の変化を調べた。TRPV4-KO由来の膀胱上皮では野生型に比べ、伸展刺激によるカルシウム流入応答は有意に減弱しており、また、フォトンイメージング法およびバイオセンサー法を用いたATP測定実験でも、TRPV4-KO群は有意に放出量が低下した。さらに、ATP放出を抑制する各種inhibitorを用いることにより、膀胱上皮では主に開口放出経路を経て、ATP放出を行っているという新たな知見をうることができた。(マウス個体での排尿行動実験ならびに膀胱内圧測定実験):今回、新規にマウス用排尿代謝ケージシステムを構築し、定量性かつ再現性のあるデータが得られた。TRPV4-KO群では野生形マウス群に比べ、有意に1日排尿回数は多く、1回排尿量も少なかった。一方で、一日飲水量や一日排尿量は両群で差がなく、これらのことからTRPV4-KOマウスは頻尿のphenotypeを呈することが明らかとなった。CMG実験では、TRPV4-KOマウス群では有意なnon-voiding contractionの増加を認め、排尿筋の異常収縮を呈したが、その他のパラメーターでは、両群で差は認められなかった。 以上の研究結果により、蓄尿時において膀胱上皮はTRPV4分子を介して伸展刺激を感知し、ATPなどの神経伝達物質を放出することで、尿意としての知覚ならびに排尿筋の安定に寄与しているのではないかと考えられた。 TRPV4は下部尿路において重要な役割を担うことが明らかとなり、今後、過活動膀胱など各種の蓄尿機能障害に対する創薬の開発においてkey-molecularとなるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に行った膀胱上皮培養細胞を用いたin-vitroの実験系では、膀胱上皮がTRPV4を介して伸展刺激を感知し、改めてメカノセンサー分子であることを再確認した。また伸展刺激により膀胱上皮細胞が情報伝達物質としてATP放出し、求心路へシグナル伝達することを明らかとし、なかでも開口放出経路がそのATP放出に主に関与していることを発見し、十分なデータが得られた。 動物個体実験(野生型とTRPV4-KOマウスを比較)では、排尿行動実験ならびに排尿反射実験を行うことで、TRPV4が下部尿路において重要な役割を担っていることを見出した。 以上の研究成果により、本研究は当初の目的どおり概ね順調に推移しているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、TRPV4チャネルが膀胱上皮に機能性を持って発現しメカノセンサーであることを実証してきた。今後は他の温度感受性TRPであるTRPV1についても同様の実験を行う予定である。また近年、新たなメカノセンサー候補としてpiezo分子が報告され(Bertrand et.al. SCIENCE 2010, NATURE 2012)、膀胱にも発現が認められることなどから、piezoに関しても分子生物学的手法、生理学的手法を用い、互いの分子のinter-action作用の有無につき確認を行う。また、今回、膀胱上皮が開口放出にてATP放出を行うことも判明したため、開口放出機構のメカニズムについてもさらに詳細に検討する。 一方、代謝ケージシステムおよび除脳を施したCMG実験では、TRPV4-KOマウスの排尿機能に関する既報の結果と大きく異なり、これまでTRPV4-KOマウスは排尿間隔の延長を示すとされていたが(Evarates et.al. PNAS 2011)、本研究では逆にTRPV4-KOマウスは頻尿を呈することが明らかとなった。我々は、蓄尿時においてATPが神経伝達物質として促進的に尿意という形でCNSに求心性シグナル伝達を行うと同時に、排尿筋に対しても直接働きかけ、弛緩作用を有しているのではないかと仮説を立ている。今後はよりデータを積み重ね、整合性のある検討を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後はTRPV4の他、TRPV1-KOマウスも購入・繁殖し、その維持管理費用として新たに充当する。消耗物品に関しては前年度と同様に計上する。また、これまでの研究結果を学会発表・論文報告すべく、それらに関わる諸経費(旅費、論文作成費用など)を当初の計画通り計上する。
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Research Products
(3 results)