2012 Fiscal Year Research-status Report
免疫性不妊女性における抗透明帯抗体のクラス分類と不妊治療への応用
Project/Area Number |
23592411
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 達也 自治医科大学, 医学部, 講師 (90348003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴原 浩章 自治医科大学, 医学部, 教授 (80206143)
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Keywords | 免疫性不妊症 / 透明帯 / 精子 / 受精 |
Research Abstract |
抗透明帯抗体を保有する不妊女性が存在する。その場合、精子は卵子と結合して受精することができず不妊症となる。本研究は抗透明帯抗体を保有する免疫学的不妊女性の不妊機序を血中及び卵胞液中の抗体のクラス分類を利用して明らかにするものである。透明帯の構造は、ZPA、ZPB、ZPCの3種類の糖タンパクから構成される。我々は抗透明帯抗体がそれらのいずれに対応するか、分子量および等電点の違いを利用し、患者毎に抗体のクラス分類を行った。そしてその抗体のクラス分類および抗体比を解析することにより、免疫学的不妊女性の受精率や妊娠率の向上を期待できるのかを解明することを目的とした。 体外受精予定患者70名の血清を精製し夾雑物を除去後に、各々の血清を用いてmicro dot assayを行い、抗体陽性者4名を選別した。その後、抗透明帯抗体陽性血清を用いてウエスタンブロッティングを行い、ZPA,ZPB,ZPCのどの部分にバンドが出現するのかを確認後、画像解析ソフトを用いてバンドの分析および定量を行った。 その結果、3種類の抗体のうち、1種類(ZPB)にのみ反応を示した。精子と透明帯の結合様式は3段階に分類でき、第1段階のprimary bindingとは、精子の先体外膜表面上の透明帯認識分子であるリガンドと、透明帯上の精子レセプターであるZPCの結合を示すので、我々は、抗体陽性患者で受精障害を伴う場合はZPC抗体の量比が高いと考えていた。しかし今回は抗ZPB抗体にのみ反応を示しており、各患者の体外受精の結果との関係を検討し、抗体のクラスと受精及び着床等への影響との関係を検討している。 不妊女性における受精率や妊娠率を向上できるよう、この二次元電気泳動システムを使用する抗体検出は重要であり、引き続きこのシステムを使用し、本研究を継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
患者の陽性判定を行うためにZPA,ZPB,ZPC全ての抗体のウエスタンブロッティングのマッピングが必要であるため、精製して活性を確認された抗体の分与を受けたがバンドが出現せず、ウエスタンブロッティングの手技が疑われたため、検討に時間を要した。結論としては当初分与を受けた精製抗体が失活していたことが判明し、新たにロットの違う抗体の分与を受けた。これらの抗体は市販されておらず、分与に頼らざるを得ないため、活性の確認は分与元の情報に頼らざるを得ない。そのため、新たな抗体に対しての至適濃度や調整等に再度の検討が必要となり、これにより、予備実験で算出された抗原濃度についても再度の検討や調整が必要となったため、多大な時間を割かざるを得なかった。 また、当初予定していた数量以上の透明帯が必要となってしまったが、予定より体外受精の希望患者が少なく、かつ採卵後の破棄卵数が少なかったため、研究への提供同意の得られた破棄卵の入手数が少なく、抗原となる透明帯の入手が困難であった。 上記により、24年度の達成度は予定より遅延が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
この研究において、抗原である透明帯は必須である。可溶化した透明帯は長期の安定保存の方法が確立されているため、より多くの透明帯を確保することが重要な課題となる。以前ブタ透明帯で行われた実験では、特異性が高く、ヒトのクラス分類に活用するにはやや信頼性に欠ける結果であったため、今回の研究では同意の得られた患者からのヒト廃棄卵に頼らざるをえない。また、IVF患者における抗体陽性者が少ないため、クラス分類に統計的な信頼性が確保できる結果が得られるためには対象者を増やす必要がある。そのために、研究同意を得られるように、積極的に研究に対する説明や協力を求める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の主要目標は対象者を増やし、抗透明帯抗体の量比と実際のIVF結果との比較を行うことであり、基本的には提出された研究費の明細に従って備品の購入等を行う予定である。今年度達成できなかった抗体陽性患者と受精障害の関係を解明するとともに、25年度の計画に記載された通り抗透明帯抗体の作用機序の解明として、抗体陽性患者と着床障害の関係を解明する。すなわち、移植しないことを前提として抗透明帯抗体陽性者の凍結受精卵に凍結融解処理を行い、受精卵のhatching状況を確認する。
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Research Products
(1 results)