2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23592525
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤本 保志 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (40344337)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 咽頭癌 / 喉頭感覚 / 嚥下圧 / 嚥下動態 |
Research Abstract |
(目的)頭頸部癌治療において放射線治療は機能温存治療の核となるものであるが、化学療法の併用などにより治療強度を高めることでその治療成績が向上してきた。一方、それに伴い治療後の嚥下障害が近年クローズアップされてきている。広範囲放射線治療症例(上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌)などによる嚥下障害の病態はおもに嚥下造影検査の検討によって多く報告されるにいたったが、嚥下機能低下のメカニズムの解明には至っていない。本研究は喉頭感覚検査、嚥下造影検査、嚥下圧測定などにより多面的な検討を行い、嚥下機能低下の原因、病態を解明することを目的とする。(対象と方法)初年度は喉頭癌・下咽頭癌のため放射線治療を行った12例を対象とした。治療前、治療後3,6,12ヶ月後の嚥下造影検査、喉頭感覚検査、臨床所見として誤嚥性肺炎の罹患や摂食状況を調査した。嚥下造影検査画像はデジタル化し、パーソナルコンピューター上で咽頭期惹起遅延時間、舌骨運動の軌跡、咽頭残留、誤嚥および喉頭侵入の程度を定量的・半定量的に解析した。(結果)全例で喉頭感覚の低下がみられたが、6ヶ月後に比較して12ヶ月後にはやや改善が見られた。嚥下造影検査時に明らかな誤嚥を認めた症例はなく、全例経口摂取が可能であったが、2例は放射線治療中に誤嚥性肺炎を来した。咽頭期惹起遅延時間、舌骨運動の軌跡(挙上距離、挙上速度)などは放射線治療後の悪化が見られず、喉頭感覚低下との関連も見られなかった。(考察)今回の対象症例は照射野が小さい早期癌がほとんどであり、中咽頭などへの照射が不要であった。そのため喉頭感覚が低下していても嚥下運動全体への影響が軽微であったと考えられた。喉頭感覚低下により、不顕性誤嚥のリスクが高くなると予測される。誤嚥性肺炎を発症した症例は高齢でもともと喉頭感覚が不良で、照射後さらに喉頭防御反射が悪化したことが要因となったと思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
12例の症例登録がされ、研究結果を得た。放射線治療により喉頭感覚があきらかに低下することが明らかとなり、さらに、喉頭感覚低下と嚥下造影所見との関連についての知見を得ることができた。今回の結果から、喉頭感覚低下が見られても咽頭期惹起および舌骨運動には影響しないことがわかった。研究計画では嚥下圧検査を加える予定であったが器機調達に時間がかかったため、それは2年目より開始する。
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Strategy for Future Research Activity |
放射線照射後は咽頭残留所見が目立つことが多く、咽頭クリアランス低下が考えられたが、その点については造影検査と喉頭感覚検査では基礎的・定量的観察が不可能である。嚥下圧検査はその点での情報を多く得ることができる。今後は1)中咽頭癌、下咽頭癌のため化学放射線治療を行う症例で、2)嚥下圧検査を検討に加えて研究を継続する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
嚥下圧トランスヂューサーの滅菌システムの追加購入費用、データ記憶媒体、およびソフトウエアの更新費用、International Conference on Head and Neck Cancer, Dysphagia research Societyにおいて成果を報告する予定であり、その旅費および参加費に使用する。
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Research Products
(1 results)