2012 Fiscal Year Research-status Report
頭頸部癌の浸潤・転移におけるEMTによる癌幹細胞活性化機構の解明
Project/Area Number |
23592537
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
太田 一郎 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (00326323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 昭久 群馬大学, その他部局等, 准教授 (60275336)
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Keywords | 頭頸部外科学 / 癌幹細胞 / 浸潤・転移 / EMT |
Research Abstract |
本研究では、頭頸部癌の治療効果の向上のため、癌細胞の浸潤・転移のしくみを解明し、そのしくみを基に浸潤・転移を阻止することを目的としている。これまでに、Wntシグナル伝達経路がSnailを介してEMT(Epithelial-Mesenchymal Transition、上皮間葉移行)を誘導することで、MT1-MMPおよびMT2-MMPを活性化させるとともに、癌細胞の浸潤・転移能を獲得させることを見出してきた。そこで、頭頸部癌細胞において、いかにしてWnt/Snailのシグナル伝達経路がEMTを誘導し、癌幹細胞を活性化させ浸潤・転移を促しているかを、in vitroおよびin vivoのレベルで分子生物学的手法および独自の浸潤・転移モデルを用いて解明する。 本年度までに頭頸部癌細胞においてin vitroでWnt/Snailのシグナル伝達経路がEMTを誘導し、癌の浸潤・転移を促していることを見出してきた。その結果を踏まえて、in vivoにおいても、我々が開発・確立した鶏卵によるin vivo癌浸潤・転移モデルを用いて、Wnt1あるいはSnailを強発現させた癌細胞が、生体において浸潤・転移能、さらには腫瘍増殖能を獲得することが分かってきた。さらに、EMTを誘導された癌細胞は、癌幹細胞様の形質を獲得する可能性があり、その解析が必要となってくる。 今後、EMTに関わるこれらのシグナル伝達経路を制御することは頭頸部癌の浸潤・転移を制御することに繋がると考えられ、その意義は大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より予定していた頭頸部癌細胞株へのSnail遺伝子の導入も実行できEMTの形質変化が確認でき、癌細胞の浸潤・転移の機能解析のためのin vitro実験も遂行できた。 一方、Snail-siRNAを導入することで浸潤・機能の抑制効果も確認できた。 その結果をもとに、我々が開発・確立した鶏卵によるin vivo癌浸潤・転移モデルを用いて、Wnt1あるいはSnailを強発現させた癌細胞が、生体において浸潤・転移能、さらには腫瘍増殖能を獲得するかどうかを検討した。その結果、in vivoにおいてもSnail発現細胞において浸潤能が亢進していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までのin vitroおよびin vivoにおける頭頸部癌細胞でのSnailの発現によるEMT誘導、ならびに癌細胞の浸潤・転移の亢進の結果を踏まえて、これらの細胞群が癌幹細胞様の形質を獲得しているかを検証する。さらに、元来Snailを強発現している癌細胞(癌幹細胞)に対して、特異的なsiRNAを用いて遺伝子発現をknock downさせ、生体において転移能を抑制できるかを鶏卵によるin vivo癌浸潤・転移モデルを用いて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は当初計画していた細胞培養の維持にかかる費用が軽減されたために次年度使用額が発生したが、次年度はin vitroでの癌細胞の機能実験に加え、鶏卵によるin vivo癌浸潤・転移モデルを用いての動物実験を施行するとともに、これまでの成果をまとめ、国内外の関連学会において発表し、関連学術誌に投稿するために研究費を拠出する予定である。
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