2011 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜ー核内シャトル分子Hicー5の皮膚創傷治癒における役割の解明
Project/Area Number |
23592647
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
乾 重樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座准教授 (30324750)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板見 智 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座教授 (30136791)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 創傷治癒 / 表皮 / ケラチノサイト / 皮膚再生 / Hic-5 / 分化 |
Research Abstract |
細胞膜ー核内シャトル分子Hic-5の創傷治癒における役割を検索する目的で、表皮を主に構成し、創傷治癒に重要な働きをする細胞であるケラチノサイトに注目し研究を進めた。ヒトケラチノサイトの分化過程におけるHic-5の細胞内局在を検討した結果、核辺縁から細胞膜への移動がみられた。このことから、Hic-5がケラチノサイトにおいて何らかの生理学的役割を果たしている可能性が示唆されたので、ヒトケラチノサイト細胞株Hacat細胞を用いてHic-5ノックダウン細胞を作成した。その結果、Hic-5ノックダウン細胞ではコントロール細胞に比べて、IdU取り込みによってアッセイされた増殖活性が抑制された。次に試験管内で細胞培養面に人工的創傷を加え、かつ、マイトマイシンC処理を行い増殖を阻害した上で、Hic-5ノックダウン細胞の細胞遊走能をアッセイしたところ、コントロール細胞に比べて遊走が亢進していた。また、コラーゲンタイプIVに対する接着能について検討したところ、Hic-5ノックダウン細胞はコントロール細胞に比べて接着が抑制されていた。マウス皮膚の免疫組織学的染色の結果では、創傷治癒過程において急性期ではHic-5の発現は低かったものの、ヒト組織の検討ではケロイド部では表皮に発現が強く認められ、創傷治癒の早期では発現を低下させ、慢性期では上昇している可能性が考えられた。以上から、細胞膜ー核内シャトル分子Hic-5は増殖と細胞接着には促進的に、逆に細胞遊走、早期分化には抑制的に働き、むしろその発現を低下させることで創傷治癒を促進する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
皮膚創傷治癒において重要な役割を果たす表皮ケラチノサイトについて、細胞膜ー核内シャトル分子Hic-5に発現および分化過程における細胞内局在の変化を明らかにできた。さらにHic-5ノックダウン細胞を用いた実験から、この分子が有する、表皮ケラチノサイトの増殖、遊走、接着における役割について新しい知見を得ることができた。さらには、急性期創傷治癒過程では発現は低く、慢性期に入ったケロイド部の表皮では発現が高いことから、急性期においてはその発現量を低下させることで創傷治癒に促進的役割を果たしうるものと考えられ、創傷治癒においてその役割を合理的に説明することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は皮膚におけるHic-5の免疫染色を行い、この過程で表皮でだけでなく、真皮内の発現についても研究を進めていく。特に創傷部位についてはマウスの創傷治癒過程の組織とヒトの創傷部の組織を用いて検討して行きたい。また、皮膚の構成細胞であるメラノサイトについてもその発現を検討し、発展的研究を行って行きたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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Research Products
(17 results)