2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜ー核内シャトル分子Hicー5の皮膚創傷治癒における役割の解明
Project/Area Number |
23592647
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
乾 重樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30324750)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板見 智 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30136791)
|
Keywords | Hic-5 / 細胞増殖因子 / 線維芽細胞 / ケラチノサイト / 創傷治癒 |
Research Abstract |
マウス皮膚創傷治癒の組織サンプルを抗Hic-5抗体で免疫染色を行ったところ、創傷治癒後期の一部の線維芽細胞に陽性像を認めた。ヒトの創傷治癒部で同様の実験を行ったとこと、その陽性像は明確ではなかった。ところが創傷治癒後のケロイド部では抗Hic-5抗体による染色で明確な陽性像が得られた。したがって、マウスの場合は創傷治癒過程の後期から、ヒトの場合は創傷治癒後の線維化の段階でHic-5が発現してくると考えられた。そこでHic-5発現ベクターをトランスフェクトしたヒト線維芽細胞におけるコラーゲン合成を調べたところ、コントロールベクターをトランスフェクトした細胞よりもコラーゲン合成は上昇していた。また、同時にこれらの細胞間での種々の細胞増殖因子の産生量を比較したが、有意な差はなかった。以上のことから、真皮線維芽細胞においては早期の創傷治癒過程にはHic-5は大きな働きをしていないことが推測された。しかしながら、後期の創傷治癒過程において線維芽細胞がコラーゲンなどマトリックス産生がはじまる時にその合成を上昇させることで、治癒後の組織をより強固にすることに働いているものと考えられる。さらには過剰な線維化には病因学的な役割をしていることが示唆された。一方、種々の細胞増殖因子はHic-5の過剰発現によっては誘導されないことからHic-5は表皮においてはケラチノサイトの増殖、遊走、接着、分化を調節することによって創傷治癒に重要な役割を果たしているが、真皮においては創傷治癒そのものよりもむしろその完成後に重要となると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Hic-5の皮膚と創傷治癒における役割について、表皮ケラチノサイトと真皮線維芽細胞という主要な構成細胞について調べることができた。また、その2種の細胞について異なった役割をHic-5は果たしていることが明らかになった。また、創傷治癒促進のターゲット分子としてのHic-5は表皮でより重要であることがわかった。このことはより治療アプローチが表面に近く、行いやすいことを示しており、創傷治癒を促進するための治療開発へのヒントを与えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
皮膚における構成細胞として表皮ケラチノサイトおよび真皮線維芽細胞についてHic-5の創傷治癒過程における役割を調べてきたので、今後もうひとつの重要な構成細胞であるメラノサイトにおける役割を調べたい。培養メラノサイトを用いてHic-5の発現およびノックダウンの影響を調べていきたいと考える。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
メラノサイトの細胞株の取得および細胞培養のために研究費を使用したい。さらに細胞株を用いたノックダウンのための分子生物学的手法を行うため、研究費を用いる予定である。
|
Research Products
(10 results)