2011 Fiscal Year Research-status Report
細胞表面に局在する"細胞内タンパク質"の網羅的解析と組織障害・修復機能の解明
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23592670
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
泉 友則 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00261694)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 機能プロテオーム解析 / 細胞表面標識 / 細胞質漏出 / 炎症メディエーター / 疾患マーカー |
Research Abstract |
本研究課題では、ヒト株化培養細胞をモデル試料とし、組織障害にともなって細胞外へ漏出し、近傍あるいは遠隔の細胞に影響を与える細胞内タンパク質の動態を解析する。H23年度は、細胞表面に結合した細胞内タンパク質を選択的にビオチン化標識し、ナノフローLC-MS/MSシステムにより網羅的に同定した。また、細胞損傷にともなう細胞内タンパク質の放出を無血清培養条件により経時的に解析した。はじめに、炎症関連細胞のモデルとしてU937細胞を利用し、培養液中にヒト線維芽細胞株293細胞の可溶性抽出タンパク質を添加しインキュベートした。培地を除去後、生理食塩水(PBS)で洗浄、細胞膜不透過性のアミノ基標識ビオチン試薬にてU937細胞表面を選択的に標識し、溶出用緩衝液にて表面結合タンパク質を回収した。コントロール実験との比較から、添加した可溶性抽出タンパク質はU937細胞表面に結合し、ビオチン標識化され、特定条件下で選択的に溶出されることが確認された。溶出タンパク質画分を常法に従って尿素変性、還元アルキル化、およびトリプシン消化し、モノメリックアビジンカラムによりビオチン標識ペプチドを精製後、ナノフローLC- MS/MS分析を行った。MASCOTデータベース検索の結果、ビオチン標識を含む2,185種類のユニークなペプチド配列を決定し、最終的に454種類のタンパク質を同定した。同定タンパク質には、HMGB1やヒストンなど、細胞表面への局在が報告されている既知の疾患メディエータータンパク質が含まれ、組織損傷マーカーとして知られている代謝酵素群も細胞表面結合タンパク質として多数同定された。最後に、無血清培養条件下での293細胞からのタンパク質漏出を経時的に解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、1)細胞への細胞内タンパク質の結合と表面選択的標識、2)細胞表面結合タンパク質の網羅的同定、3)細胞損傷により漏出する細胞内タンパク質の動態解析、以上3項目を実施計画に記載した。機能プロテオミクスの実験条件の検討を終了し、細胞表面結合タンパク質の網羅的解析データをすでに取得している。またタンパク質放出の動態解析実験を実施し、それらのデータにもとづき候補のタンパク質の選定を進めていることから、おおむね計画通りの実施状況といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度は、当初の研究計画に沿って、1)細胞影響解析のための機能分子候補の選定、および2)異所性細胞内タンパク質の細胞影響解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度の研究費使用計画は、当初の研究計画から大きな変更はない。H23年度に同定したタンパク質リストから機能分子候補を選定し、それらの細胞影響を解析するために、研究費は主として細胞培養実験、および遺伝子・タンパク質解析実験に使用する。また、実験を継続する上で、質量分析装置消耗部品(ターボポンプ)の早期交換の必要性が出てきたため、H23年度に予定していた質量分析消耗品予算の一部と、細胞培養実験、および細胞表面標識実験の微小化を進めることで確保できた予算、計936,110円をH24年度予算と合算し使用する。
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Research Products
(1 results)