2012 Fiscal Year Research-status Report
歯周病原菌代謝産物のエピジェネティク制御遺伝子への作用と難治性全身疾患への影響
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23592714
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
落合 邦康 日本大学, 歯学部, 教授 (50095444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 健一 日本大学, 歯学部, 准教授 (60381810)
田村 宗明 日本大学, 歯学部, 助教 (30227293)
津田 啓方 日本大学, 歯学部, 助教 (60325470)
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Keywords | 酪酸 / EBV / HDAC / ウイルス / 微生物間相互作用 |
Research Abstract |
われわれは、歯周病原因菌P. gingivalisの代謝産物・酪酸がHIVプロモーターのHDACを阻害しクロマチン構造を変換することで潜伏感染HIVを再活性化し、 歯周病がエイズ進展に関与する事を報告してきた。最近、ヘルペスウイルスやHTLV1などの潜伏感染成立にもエピジェネティック制御が深く関わっていることが報告されており、歯周病が他の潜伏感染ウイルスにも影響を及ぼしている可能性がある。 Epstein-Barrウイルス(EBV)はB細胞に感染後、潜伏感染状態となる。ウイルスと宿主の共存関係が破綻すると、EBV再活性化や感染細胞の異常増殖がおこり伝染性単核球症や上咽頭がんなどが発症する。近年、EBVの活性化が歯周病や慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎等の炎症疾患の発症に関与しているとの報告が多数なされているが、EBVの再活性化機構は良くわかっていない。われわれはEBVのゲノムDNAが宿主細胞に感染した後に環状となり、クロマチン構造をとることに着目し研究を行った。その結果、歯周病原菌の主要な代謝産物である酪酸がEBVの再活性化に必須である最早期遺伝子ZEBRAの発現を転写レベルで誘導する事を見出した。転写因子ZEBRAは他のウイルス蛋白やRNAの発現を誘導しEBV関連疾患を引き起こすことから、歯周病がEBVを再活性化し口腔毛様白板症やがんおよび重度の歯周病の進展に深く関与している可能性を示唆している。 歯周病原菌がレトロウイルスのみならずDNAウイルスの複製にも影響を及ぼすことが明らかとなり、歯周病がウイルス感染症の進展に深く関与している可能性がある。酪酸を介する歯周病研究を通して、EBVが関連する炎症疾患の分子基盤が明らかになることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究成果の一部をまとめ、いくつかの学会で発表を行った。また、歯周病原菌の酪酸を介するEBV再活性化に関する研究は論文としてまとめ、公表する事が出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、実際の体内における酪酸の動向を検討するために、引き続き13C-酪酸をラット歯肉組織内に接種する実験を行う。予備実験として、頸静脈より経時的に採血し、血中-酪酸量をUPLC/MS/MS systemにより測定した。その結果、歯周組織において酪酸は90分後をピークに採血終了の120分まで検出された。しかし、腸管内に接種では腸管周囲静脈からn-酪酸は全く検出されなかった。このように、組織によって酪酸の吸収の仕方が違う事が初めてわかった。現在、実験規模を拡大し、確認実験を行っているが、本年度中に論文としてまとめる事が期待できる。あわせて、腸管や女性生殖器に常在する酪酸産生菌によるHIV再活性化に関する詳細な分子機構も主に分子生物学的手法を用いて検討する。更に、本年度はEBVの潜伏感染機構を明らかにする。ウイルスの潜伏感染のように、長期間にわたり安定に遺伝子発現を抑制するためにはHistone H3 Lysine 9(H3K9)のメチル化が重要であることが知られてはいるものの、EBVの潜伏感染における脱アセチル化以外のヒストン修飾の関与はよくわかっていない。そこで、EBV潜伏感染におけるH3K9メチル化酵素Suv39hやG9aの役割とその機構を解析する。EBVは種々のガンや炎症性疾患の発症に関わっているため、本研究の遂行により新たな病因論の解明に繋がる事が期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
酪酸産生菌によるHIV再活性化に関する詳細な分子機構も主に分子生物学的手法を用いて検討するために、ルシフェラーゼアッセイやチップアッセイを行うがそのキットおよび、免疫沈降で使用する抗体等を購入する。EBV再活性化におけるメチル化の関与を解析するために、種々のメチル化酵素阻害剤を購入する。酪酸実験に関しては引き続き動物実験に関する消耗品、および酪酸濃度測定のための業務委託費が発生する。また、成果の発表と公表のために学会参加旅費と参加費と論文作成、及び論文作成関係費(英文校正や掲載料、別刷代)が必要となる。
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Research Products
(20 results)