2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23592765
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
澤尻 昌彦 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (20325195)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 雄二 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (80218370)
滝波 修一 北海道大学, 歯学研究科(研究院), その他 (60154952)
谷本 啓二 広島大学, その他の研究科, 教授 (10116626)
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Keywords | メダカ(Oryzias) / 放射線照射 / 破骨細胞誘導 / シグナル伝達物質 / 骨浸潤性腫瘍 |
Research Abstract |
骨軟骨部に対するがん放射線治療の質的向上を目指すためには放射線による骨の反応を調べる必要がある。近年メダカ(Oryzias)とヒトは共通の遺伝子が多く,咽頭歯骨において哺乳類と同様の破骨細胞による骨吸収が見られることが明らかになってきた。従来培養細胞において細胞間信号伝達物質を調査してきたが,がん放射線治療の質的向上を図るために形態学的観察,サイトカインなど骨代謝因子の放射線による影響と組織学的にサイトカインの分布を調査する必要があり,メダカを用いて免疫学的手法による分布と微細構造を調査しがん放射線治療における放射線障害の防止方法を開発することを目的とした。 骨浸潤性腫瘍に対する放射線治療において照射後の骨の機能と形態の温存が重視されるために我々は炭素粒子線,ガンマ線をそれぞれ照射したメダカ(Oryzias)咽頭歯骨部を用いて放射線照射後の骨代謝,破骨細胞誘導サイトカイン等のシグナル伝達物質を生化学的に計測し,さらに形態学的変化を観察してきた。炭素線照射後の咽頭歯骨においては破骨細胞のマーカーであるTRAPの発現が少なく,骨吸収を行う破骨細胞の誘導が阻害されていることが示され,その要因として骨吸収因子とされるサイトカインの発現が抑制されていることが示され,ガンマ線照射による応答と異なった結果となった。 この要因をさらに解析するためにはがん細胞,骨芽細胞に炭素粒子線,ガンマ線照射して遺伝子損傷を比較する必要がある。メダカにおいても生体内に於ける遺伝子損傷の状態を観測して骨代謝におよぼす影響を調査して骨浸潤性腫瘍の破骨細胞の誘導と骨破壊の制御と共に照射後の病的骨吸収を抑制することで口腔の機能と形態の温存を図り,がん放射線治療における質的向上を研究する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
骨軟部に対するがん放射線治療の質的向上を目指すためには放射線による骨の反応を調べる必要がある。近年メダカを用いた実験研究が盛んになってきたのはメダカ(Oryzias)とヒトは共通の遺伝子が多く,咽頭歯骨において哺乳類と同様の破骨細胞による骨吸収が見られることが明らかになってきたためである。しかし,現状では実験に欠かせない抗体など実験に必要な試薬,実験装置で市販のものが少ないため研究者自らが作成して実験に臨む必要がある。実験手技においても過去の研究による文献もマウス等の小哺乳動物を用いたものと比べ少ない。メダカは大量飼育が可能でサンプルも数多く作成できる。しかし,メダカ(Oryzias)咽頭歯骨部を用いて放射線照射後の骨代謝,破骨細胞誘導サイトカイン等のシグナル伝達物質を生化学的に計測するにはサンプルが微少なために操作性が悪く,試行錯誤の状態が続いた。組織学的計測もサンプルが微少なためにテクニカルな難点が多くやや計画が遅れ気味であることは否めない。
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Strategy for Future Research Activity |
最近になってメダカのゲノム,タンパクのシーケンスなどの公開情報が格段に充実したために,抗体の作成なども準備期間の短縮が期待できる。放射線医学総合研究所の協力によりテクニカルな問題に伸展が図られた。さらにメダカのゲノム解析が進み骨代謝因子のタンパクシーケンスが公開されている。これを参考に構成ペプチドを作成して,これによってマウスよって抗体を作成して放射線照射後の骨代謝因子の分布の変化を観察したが結果は不十分であった。 メダカに放射性同位元素を摂取させて内部被曝のモデルとして研究対象する予定であったが,対象が微少であるために内部被曝が起こっても測定限界以下のために現状では中断している。またメダカはライフスパンが短く腫瘍誘発の実験には適さないが,被曝からタイムコースによって屠殺してサンプルと採集するには好都合で有り採用する予定である。被曝から生体内に於ける遺伝子の損傷と回復を経時的に観察予定である。現在,放医研では内部被曝のモデル動物としてメダカを使用するために準備中であり,今後も放医研との共同で実験を推進する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
機器類,装置に関してはほぼ充足しているので今後は試薬,消耗品の購入にその多くを使用するであろう。メダカを実験動物として使用する研究者,研究機関は増えているが全体から見ると未だ少数で市販の抗体など稀少であり,研究者自らが作成する必要がある。これらが研究遂行の上で難点であり,放医研をはじめ他の研究機関との連携が必要なゆえんである。また,テクニカルな問題で外部の機関への依頼分析,発表,他機関研究者との協議の必要性も有り旅費等の支出も必要となるであろう。 メダカは大量飼育が可能で数多くのサンプルを作成できる利点もあるが,標本自体が微小で人手による工数が多くかかるのが難点である。このため試薬や消耗品の使用量も多くなり,専門の業者あるいは他機関への委託をすることも検討したい。
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Research Products
(2 results)