2011 Fiscal Year Research-status Report
催眠・鎮静薬による健忘作用に対するアデノシン受容体の関与
Project/Area Number |
23593000
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
櫻井 学 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (50225843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮脇 卓也 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00219825)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アデノシン受容体 / 健忘効果 / 鎮静効果 / アミノフィリン |
Research Abstract |
鎮静状態と健忘効果について観察した.有志の健康成人男性30人を対象とし,3グループに分け90分間の観察を行った.グループA:ミダゾラム 0.06 mg/kgの1回投与,グループ B:ミダゾラム 0.1 mg/kgの1回投与,グループC:adenosine 5'-triphosphate(ATP)100 μg/kg/minの50分間持続投与.測定項目は,bispectral index (BIS),健忘効果(鎮静前および鎮静後30分毎に試験),呼吸・循環パラメーター,血漿ミダゾラム濃度とした.ミダゾラム投与に伴い鎮静レベルは徐々に深くなり,投与後30分で鎮静状態の評価に用いたBIS値が最低値を示した.その後BIS値は緩徐に上昇しミダゾラム 0.06 mg/kg投与ではBIS値が鎮静開始前に回復するのに90分を要した.ミダゾラム 0.1 mg/kg投与では,ミダゾラム投与後90分でもBIS値の回復は認められず,鎮静からの回復が緩徐であることが示された.ATP投与では,BIS値の有意な変化は認められず,100 μg/kg/minのATP投与では,鎮静状態が得られなかった.一方健忘効果は,ミダゾラムあるいはATP投与開始前の健忘効果は認められず,逆行性健忘は3グループとも認められなかった.ミダゾラム0.06 mg/kg投与では健忘効果が投与後30分で全例認められ,60分で5例に認められ,90分では健忘作用が認められなかった.ミダゾラム 0.1 mg/kg投与では,30分で全例健忘が認められ, 60分で6例,90分に2例に認められた.ATP投与グループでは各時点で健忘効果は認められなかった. 今回の結果から,単にアデノシン受容体を刺激しても鎮静効果は得られず,鎮静効果の増強に伴い健忘効果も増強されることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の結果から,同一薬物(ミダゾラム)使用時は鎮静のレベルが深いほど健忘効果が増強されることが証明された.ミダゾラムには,ベンゾジアゼピン受容体へ作用し鎮静効果を得るが,アデノシンのuptake inhibitorとしての作用もあり,それにより中枢でのアデノシンが増加することが考えられる.一方,アデノシンには催眠に影響を与えると考えられており,それにより鎮静効果が発現することが考えられる.しかし今回,アデノシンの前駆物質であるATPを投与し,アデノシン受容体を刺激しても,鎮静効果および健忘効果は認められなかった.このことからATP単独で鎮静および健忘効果を得るにはATPの投与量を増加する必要があるが,研究代表者はこれまでATPの投与量増量による呼吸・循環に影響を与えることを観察しており,ATP単独で鎮静・健忘効果を得ることは困難であることから,アデノシン受容体を介した鎮静・健忘を得るには,他剤との併用が必要であることが今回の結果から示された.これまで,同じ鎮静レベルでも,異なる薬物では健忘効果に差が認められており,作用する受容体により健忘効果に差が認められる可能性もある.そのため,来年度からは本年度の得られた鎮静深度を利用し,異なる薬物で同レベルの鎮静状態での健忘効果を評価するとともに,同レベルの鎮静状態でもアデノシン受容体を刺激するATPを併用によるときと鎮静薬・麻酔薬単独の健忘効果を比較する必要性がある.また,今回行った研究でミダゾラム投与後,フルマゼニルと投与すると一度は完全覚醒するが,その後再鎮静が起こることがわかった.これはフルマゼニルにもミダゾラムと同様にアデノシンのuptake inhibitorとしての作用がありその結果生じたことが考えられ,今後健忘効果の研究と合わせて貴重な結果が得られる可能性がある.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度からはミダゾラム単独投与とミダゾラムおよびATPの併用投与の比較を行う.BISを用い鎮静状態を評価し,ミダゾラム単独とミダゾラムとATP併用で同レベルの鎮静状態にし,健忘効果について評価する.具体的には,これまで研究代表者が行なってきた研究から,ミダゾラム0.04mg/kgを1回投与しその後より8分かけてATP製剤の投与速度を100 100 μg/kg/minとし50分間持続投与する.ミダゾラム単独では,0.06mg/kgを1回投与する.鎮静中は両群の鎮静度が同レベルになるようにBISを用い確認する.また,ベンゾジアゼピンの拮抗薬であるフルマゼニルと,アデノシン受容体の拮抗薬であるアミノフィリンを投与し,その時の健忘状態についても評価する.具体的には,ミダゾラム0.06mg/kg投与後30分にアデノシン受容体の拮抗薬であるアミノフィリン5mg/kgあるいは,ベンゾジアゼピン受容体の拮抗薬であるフルマゼニル0.5mgを投与し,その後の健忘効果について比較する.測定項目:【鎮静レベルと覚醒反応】BIS値から鎮静状態の評価し,鎮静レベルのコントロールの指標とする.【健忘効果】2枚の絵を鎮静開始前および鎮静開始後30分に記憶させ,鎮静開始後105分および24時間後に健忘の有無を確認する.拮抗薬使用時は鎮静開始前および拮抗薬投与後後5分に記憶させ,同様に鎮静開始後105分および24時間後に健忘の有無を確認する.【循環】心拍数,血圧,心電図.90分間5分間隔に観察する.【呼吸】呼吸数,1回換気量,分時換気量,終末呼気炭酸ガス濃度,経皮的動脈血酸素飽和度.90分間5分間隔に観察する.【血清ミダゾラム濃度および血清テオフィリン濃度】高速液体クロマトグラフィーを用い測定する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備・備品:すべての設備が現研究環境で整っており,平成24年度以降,新たに機器・備品は購入しない.消耗品費:【脳波スペクトル分析装置センサー(BISモニタセンサー)】今回の研究で鎮静・催眠状態の把握に必須であり,BISモニターのセンサーは,ディスポーザブルであるため実験数だけ必要となる.【呼吸回路,モニター消耗品】麻酔器に接続する呼吸回路,心電図電極,記録用紙など.【テオフィリン測定キット】テオフィリンの血清濃度測定のために必要となる.【HPLC試液】HPLC用のメタノール,アセトニトリル,蒸留水などが必要となる.【マイクロピペットおよび器具】採血血液処理時に使用する.ピペットチップ,試験管(TPXチューブ)など.【薬品】ドルミカム(ミダゾラム), ディプリバン(プロポフォール),アデホス注(ATP製剤),ネオフィリン注(アミノフィリン)など.【データ解析ソフトなど】統計処理,学会発表,論文投稿時に使用する.旅費・その他:【旅費】岡山大学の研究分担者との打ち合わせ,および国内外の麻酔学会での発表.【印刷費】国内外の雑誌へ結果をまとめ投稿する.
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Research Products
(1 results)