2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23593102
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
多田 充裕 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (30260970)
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Keywords | 口臭 / 電子嗅覚装置 / 喫煙 |
Research Abstract |
近年、女性高齢者の喫煙率の増加が指摘されている。高齢者の喫煙は口臭を憎悪させるほか、動脈硬化に影響を与えることが知られており、高齢者の口臭は他人に不快感を与えるだけでなく、喫煙者本人の健康に対する為害性を表すバロメーターになる可能性があると考えられる。そこで、喫煙による口臭の特性を包括的に明らかにすることを目的とし、健常者を非喫煙群と喫煙群に分け、におい識別装置を用いた口臭検査を行い、喫煙による口臭の特性を検討したところ、喫煙者の口臭には硫化水素、硫黄系、芳香族系の成分が強く関与しているという結果が得られた。硫化水素は喫煙以外のプラークや舌苔などの生理的な口臭成分としても検出される物質であるが、非喫煙者の呼気中での検出は微少であった。しかしながら、硫化水素はタバコの主流煙に多量に含まれることから、喫煙により口腔に残留するため非喫煙者と異なる様相を呈したことが示唆された。 さらに、口臭を主訴として来院した患者を対象にして検討を行ったところ、口臭の指標となる揮発性硫黄化合物に関しては、高齢になるほどメチルメルカプタンの濃度が高くなる傾向が示された。メチルメルカプタンは歯周病の進行に伴い濃度が高くなることが知られており、高齢になるほど口腔清掃が重要であることが示された。これらの患者に生活習慣について調査をおこなったところ、口臭で悩む高齢者は、他の年齢層に比較して昼食後のブラッシングを行うことが少なく、補助的にデンタルフロスを使用することがないことが示された。また、口臭に関する質問調査では、高齢者ほど病悩期間が長く、口臭を意識したきっかけも家族からの指摘が多く、複数の医療機関を受診した経験者が多く、他人の口臭も気にしがちである傾向が示された。これらのことから、高齢者の口臭は身近な人とのコミュニケーションを阻害する大きな要因となっている可能性が示唆された。
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