2011 Fiscal Year Research-status Report
妊娠末期の妊婦における自律神経機能の修復を目的とした看護介入法の開発
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23593281
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
兒玉 英也 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30195747)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠原 ひとみ 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80319996)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 妊婦 / 心拍変動 / 自律神経系 / 睡眠障害 / いびき / メンタルヘルス |
Research Abstract |
今年度は、妊婦の安静時における日中の心臓の自律神経調節機能(心拍変動)に対する、精神的ストレス及び睡眠障害の影響を検討した。最初に妊婦30例にパイロット・スタディを行ったところ、精神的ストレス尺度と心拍変動との間に関連は認められなかった。しかし、睡眠障害との関連が示唆されたので、妊婦の自律神経機能と睡眠障害の関連に焦点を絞り、様々な妊娠週数の160人の妊婦を対象として横断的調査を行った。対象妊婦から、睡眠の長さ、睡眠の質(ピッツバーグ睡眠質問票、PSQI)、日中の眠気(エプワース眠気尺度、ESS)、いびきの有無とむずむず脚症候群の症状について、聞き取り調査を行った。同時に、安静仰臥位における心臓の自律神経調節機能を、短時間の心拍変動のスペクトル分析によって解析した。交絡変数の影響は、重回帰分析を用いて分析した。短時間睡眠群(一晩の睡眠時間>7時間)と睡眠の質低下群(PSQIスコア>5点)、むずむず脚症候群の妊婦に特徴的な心拍変動の所見は認められなかった。一方、過度な日中の眠気群(ESSスコア>9点)は、LF/HF比LF補正値の有意な上昇が認められた。また、習慣的いびき群(1週間に3夜以上)は、LFパワーLF/HF比、LF補正値に有意な上昇が認められた。重回帰分析から、習慣的いびきのLF/HF比並びにLF補正値への影響は、交絡変数によらない独立したものと考えられた。 習慣的にいびきをかく妊婦では、安静時の心臓の自律神経調節機能は交感神経優位の状態にシフトしていると考えられた。妊婦の安静時の自律神経機能を副交感神経優位の健全な状態に導くためには、妊娠に伴う生理的な気道狭窄によると思われる夜間の低酸素症(睡眠時無呼吸)を予防することが重要と示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、妊婦の心拍変動解析により自律神経機能の評価を行った上で、交感神経系の緊張状態と妊婦のQOL(睡眠・覚醒リズム、身体症状の有無、メンタルヘルス)との関係を明らかにすることが第一の目的である。また、交感神経系の緊張状態が過剰な状況にあると判断される妊婦に対して、心拍変動バイオフィードバックのプログラムを履修してもらい、そのことにより自律神経活動が修復できるのか、またその妊婦のQOLの改善に有益な結果がもたらされるのかを、検証することを第二の目的である。今年度の研究により、第一の目的である妊婦の自律神経機能と睡眠障害やうつ傾向等のメンタルヘルスの障害の関係について、基礎的な知見が得られたと考えられる。予想に反して、精神的ストレス尺度と妊婦の自律神経機能との間に有意な関連は認められなかった。一方で、妊婦の自律神経機能といびきについて、有意な関係が存在することが明らかとなり、これは、新しい知見であった。これまで、一般集団の睡眠時無呼吸の患者に於いて、日中の自律神経活動が交感神経優位にシフトすることが報告されている。したがって、妊婦の自律神経系が交感神経活動優位となる要因として、潜在的な睡眠時無呼吸による夜間の低酸素症が背景因子として存在する可能性が考えられる。今年度の研究で、妊婦の自律神経機能が交感神経優位に変化する要因の一つが明らかになった。しかし一方で、妊婦のメンタルヘルスの障害と自律神経機能との関係については、まだ不明な点が大きい。心拍変動バイオフィードバックを行う前に、特に交感神経活動により鋭敏な検査方法を用いて、メンタルヘルスと自律神経機能との関係両者の関係について更なる検討が必要と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、妊婦のメンタルヘルスと自律神経機能との関係について、交感神経活動のより鋭敏な指標であるドップラー血流測定を用いた冷水または温熱負荷試験により、さらに深く検討を進めたい。妊婦健康診査に訪れた妊婦に対し、メンタルヘルス、自律神経失調症状の有無について問診し、「夜眠れない」「いらいらする」「きもちが落ち込む」「耳鳴りがする」「頻脈がある」などといった自律神経機能の関わりの予測される健康問題を有する妊婦を対象とする。妊婦50名の参加を目標として、研究代表者の医師が交感神経機能の評価方法などの研究デザインについて説明し、研究への参加を募る。メンタルヘルスの評価は、不安状態・不安特性尺度(STAI)を用いる。また、人差指先端にレーザードプラ血流計のプローブを装着し、冷水または温熱負荷による血流の変化から、妊婦の交感神経活動を定量的に評価する。心拍変動解析並びに冷水または温熱負荷による血流変化で評価された妊婦の日常の交感神経活動と、不安状態・不安特性尺度との関係について検討する。不安や抑うつ傾向の有る妊婦に交感神経活動の亢進が確認された場合、心拍変動バイオフィードバックを用いた看護介入を行い、症状の軽減、交感神経活動の抑制が可能かどうかのパイロット・スタディを並行して行うこととした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
米国BIOCOM社製ハートリズムスキャナー・SEタイプの購入を予定している。ポータブルな心拍測定装置であるハートリズムスキャナーは、センサーを耳につけるだけで脈波による心拍変動の情報が収集できることから、妊婦でも抵抗なく装着でき、本研究に必須のアイテムである。その他はデータ分析に伴う消耗品、英語論文作成のための翻訳経費が、主たるものである。
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