2011 Fiscal Year Research-status Report
養護教諭が行う養護診断・対応のマニュアル開発と対応システム構築に関する研究
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23593414
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Research Institution | Niigata Seiryou University |
Principal Investigator |
中村 恵子 新潟青陵大学, 看護福祉心理学部, 教授 (10410250)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 学校看護 / 養護教諭 / 養護診断・対応 / マニュアル |
Research Abstract |
新潟県内の幼稚園、小学校、中学校、中等教育学校、高等学校、特別支援学校に勤務するすべての養護教諭を対象として、子どもの心の健康問題における養護診断・対応について、質問紙調査を行った。調査目的は、子どもの保健室来室時における保健室来室者記録などの使用に関する実態を明らかにすること、養護診断・対応プロセスの一般化を図ること、学校外の関係者との連携の現状と課題を探ることの3つである。2011年9月から11月にかけて実施した。対象者の勤務校へ無記名自記式の質問紙を郵送し、回収方法も郵送によるものとした。対象者は938名で、回収率は69.4%であった。 保健室来室者記録などの使用に関する調査では、調査項目ごとに単純集計やクロス集計等を行い、自由記述回答については、類似する記述内容ごとに分類を行った。保健室来室者記録は、校種等により記載内容が異なり、多岐にわたることが明らかになった。約4割の養護教諭が、記録の改善を試みたいと感じていることも分かった。また、養護診断・対応プロセスについては、教職経験年数や校種、所有免許による平均値差の検定と、共分散構造分析によるパス解析を行った。共分散構造分析を行った結果、すべて有意である推定値(標準化推定値)が得られ、適合度指標は、GFI=.905、AGFI=.885、CFI=.907、RMSEA=.052であり、観測変数は26、潜在変数は7であった。20年未満の群では子どもと理解や関わりを大切にしている傾向があり、20年以上の群では計画性や連携を重視して対応を行っている傾向があることが分かった。さらに、外部機関や専門家との連携に関する調査では、86%の養護教諭が連携の経験があり、学級担任に次いで養護教諭が連携を図っている場合が多いことが分かった。 質問紙調査のすべての対象者に、調査結果と学会での発表資料を郵送し、研究成果をお知らせした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の1つとして、養護教諭が行っている養護診断と対応の実態を明らかにするとともに、学校外の関係者との連携の現状と課題を探ることを挙げている。本年度の調査研究において、その目的を十分達成するができ、計画通りに研究を進めていることから、おおむね順調に進展していると判断した。 新潟県のすべての養護教諭938名を対象とした質問紙調査を実施し、69.4%という高い回収率で、十分なデータを収集することができた。データを分析した結果、子どもの保健室来室時における保健室来室者記録などの使用に関する実態を明らかにするとともに、量的分析による養護診断・対応プロセスの一般化を図り、先行研究「心の問題を持つ子どものサインとその養護診断・対応プロセスに関する研究」において得られた研究成果をさらに発展させることができた。このことにより、養護診断のマニュアルやチェックリストを作成するために必要となるデータや新たな知見を得た。また、学校外の関係者との連携の現状と課題について探ったことで、次年度の課題である子どもの健康問題における連携の在り方に関する調査研究についての方向性が分かり、調査対象者や分析方法などの具体的な研究方法について明確にすることができた。 これらの調査研究の成果を学会において発表するとともに、全対象者に調査結果と学会での発表資料について郵送して報告を行った。そのことにより、研究者及び養護教諭に広くこれまでの研究成果をお知らせすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度実施した質問紙調査の知見をもとに、養護診断・対応のマニュアルとチェックリストの作成作業を進めていくとともに、これまでの研究成果を論文としてまとめる。 また、養護教諭を対象とした質問紙調査によって明らかにした子どもの健康問題に関する学校外の関係者との連携の現状と課題をもとに、養護教諭やスクールカウンセラー、医療関係者や福祉関係者などに面接調査をし、子どもの健康課題における連携の在り方について考察する。新潟市及び近隣の市町村に勤務する養護教諭4名、スークールソーシャルワーカー、精神科医、臨床心理士、教育相談センター及び児童相談所の職員を対象に、面接調査を行う。データの分析は、TEMという手法を用いる。そのため、TEMに関する研修会を開き、分析方法について研究協力者と共通理解を図る。面接調査ののち、分析結果を対象者に示しヒアリングを行う。9名の対象者に対して、ヒアリングは最低2回ずつ行うものとする。面接調査及びヒアリングの場所は、対象者の勤務場所を予定している。研究の妥当性・信頼性を高めるために、小学校、中学校、高等学校の養護教諭3名と研究者3名に研究協力を依頼し、分析結果を検討していただく。これらの面接調査により、連携における対応システムを構築するための知見を得たいと考えている。研究成果は、学会において発表する予定である。 養護教諭が実際の養護診断・対応時に活用できるマニュアルとチェックリストを開発し、連携におけるシステムを構築して、冊子としてまとめ、平成25年度には、新潟市内の養護教諭に配布する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、主に面接調査を実施するための費用として研究費を使用する予定である。まず、9名の面接調査対象者への謝礼、6名の研究協力者への謝礼と旅費が必要である。データはICレコーダーに録音し、テープ起こしをする必要があるため、テープ起こし代も予定している。養護診断・対応、連携など研究テーマに関する図書や、TEMなどデータ分析に関する図書も購入する予定である。必要な事務用品等も適時購入する。 また、学会発表のための旅費、学術集会参加費、発表や論文投稿の費用なども必要である。
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Research Products
(3 results)