2011 Fiscal Year Research-status Report
沖縄の小離島における介護と看取りに関連する要因の研究
Project/Area Number |
23593446
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
古謝 安子 琉球大学, 医学部, 講師 (30305198)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 小離島 / 高齢者介護 / 看取り / 沖縄 |
Research Abstract |
本研究では、介護基盤体制が脆弱な小離島における介護と看取りとの関連要因を明らかにすることを目的に、座間味村において住民の死亡状況の把握と看取り終えた家族への聞取り調査および看取りと葬法に関する住民への質問紙調査を企画した。それらの検討により介護と看取りを可能にする島内居住体制整備にむけた示唆は、島嶼地域のみならず過疎高齢地域における在宅ケアシステム推進への手がかりになると考える。初年度は、座間味村役場や保健医療福祉関係者および住民との信頼関係を築いた上で、先行研究以降の最近10年間の死亡状況調査と先進地視察とを企画した。しかるに、座間味村の本研究に対する期待と信頼は大きく、これらの調査を座間味村の主体として情報開示し、調査員として依頼した民生委員に対する説明や指導も協同で取り組んだ。その結果、初年度において最近10年間の死亡状況の確認とデータの把握、20歳以上の全住民を対象とした看取りと葬法に関する質問紙調査、さらに次年度予定であった看取り終えた家族の所在確認と面接への同意の有無確認、同意の得られた家族への半構造化面接を実施できた。面接は許可を得て録音し、録音内容は逐語録にするとともに、調査対象者から得られたデータはすべて電子媒体とした。調査の成果として、確認できた最近10年間の死亡111例中、島内死亡は26例(23.4%)で、その内埋葬は6例(23.0%)であった。島内死亡では全員埋葬されていた10年以上前の村の葬法とは異なる結果であった。また20歳以上住民に実施した調査では、472人から調査票の回収が得られた(回収率67.0%)。さらに、看取り終えた家族からの面接許可は41例得られ、島内看取り6例、島外看取り25例の計31例に面接を実施した。調査データの解析および研究成果の発表は次年度以降に予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において、調査地役場および関係者との信頼関係が構築され、計画していた死亡概要調査や20歳以上住民への悉皆調査のほか次年度予定であった看取り終えた家族への面接調査も実施することができており、おおむね順調に進展している。このように円滑に進められたのは、本研究の目的である島内看取りが可能となる介護体制や親族支援および看取りを経験した親族支援の実際と介護看取りの関連要因の把握が、座間味村役場が課題としている島内介護基盤体制整備と合致したことによると考えられる。特に看取り終えた家族に対する面接調査承諾の可否については役場担当者の倫理的配慮に基づく対応があり、31例から介護看取りの体験を聴取することができた。次年度は、それら調査データの解析で得られた研究成果を調査地に還元するとともに関連学会等での発表を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では初年度において次年度計画の調査も進めることができた一方で、時間的な制約があり初年度予定していた在宅看取りの先進地視察は実施できていない。しかしながら、初年度の調査を遂行する中で、座間味村役場および保健福祉関係者の介護基盤体制整備に対する認識の強さを感じることができた。それらが本研究への主体的な関わりに表れており、研究者主体の先進地視察ではなく対象地のニーズを勘案した3年目に繋がる視察として次年度に企画した。3年目に予定している島内介護看取り体制のあり方に関する検討会の運営は、関係者や住民との学習会を座間味村と協同で行い、研究成果や先進地視察における経過も住民へ還元できるよう企画する。また、次年度は本島内基幹病院における小離島高齢者の入院調査を企画している。 対象者はすでに退院しており、入院期間に関する集団の情報を病院よりデータとして把握するので、病院長及び担当課長に倫理的配慮等について口頭と文書で説明した上で、本研究への協力を依頼し了解を得る。得られた研究成果を役場や関係者と共有し、先進地視察における情報の共有及び今後の介護基盤体制整備の方向性等に関する検討会の開催に向け準備を進める。国内外の学会への研究報告及び論文作成を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画していた初年度の在宅看取り先進地の北欧視察予定であった研究費90万円は、次年度座間味村役場関係者らと共に県内外の在宅看取り先進地視察として計画する。また次年度研究費の一部を活用し、研究者がオーストラリアの高齢者緩和ケアに関する視察を行い、それらを併せて3年目で企画する座間味村の介護看取り体制整備に関する検討会の推進に活用する。国内外の学会への研究報告のための旅費や論文作成、英訳等論文提出の準備を行う。
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