2012 Fiscal Year Research-status Report
高温超電導電流センサーとSQUIDを用いたビーム電流計の高感度化
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23600015
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
渡邉 環 独立行政法人理化学研究所, 運転技術チーム, 専任技師 (30342877)
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Keywords | 国際研究者交流 / ドイツ / アメリカ |
Research Abstract |
本研究の目的は、重イオンビームのDC電流を、非破壊で高感度に測定するビーム電流計を開発する事である。現在、脳磁や心磁の測定に利用される超電導量子干渉素子SQUID (Superconducting Quantum Interference Device)をビーム電流計に応用したSQUIDモニターの開発を進めている。既に完成したプロトタイプにおいては電流分解能が100 nAであるので、これを10nAへ高感度化することが本研究の目的である。 本研究における高感度化の検出装置は、(1)高温超電導SQUID 、(2)高温超電導電流センサー、(3)高透磁率マグネティックコア、によって構成されるが、本年度中に全ての装置の設計・製作を完了した。さらに、環境磁気ノイズの遮蔽強化ため、(4)ミューメタル材によるSQUID冷却フォルダーの設計・製作、(5)ノイズキャンセラの導入、を行った。特に、(2)高温超電導電流センサーの開発は、最も重要である。平成23年度に、高温超電導のサンプルを用いた臨界温度、臨界電流の測定、X線による結晶構造の解析、により、MgO基盤への塗布焼成法が、本研究の目的を達成できる事を確認した。本年度は、実機高温超電導電流センサーの製作に向けて、さらに前進をした。高温超電導体に剥離が起こらないよう、製作のノウハウを確立する事は非常に大きな意義があり、科研費の大半をこの研究に充て、多角的に検討を繰り返した。超伝導コイル部のNC旋盤による精密加工、電力中央研究所で開発されたMgO基盤のブラスト法の最適化など、製作ノウハウの確立後、実機高温超電導電流センサーの製作に成功した。 本年度、上記(1)から(5)に記した装置の開発・製作を完了したので、既存のSQUIDモニタープロトタイプを解体後、新しい装置と交換し、再組み立て作業を完了した。現在、実機としての使用を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように、本研究において非常に重要な役割を担う、(1)高温超電導SQUID 、(2)高温超電導電流センサー、(3)高透磁率マグネティックコア、(4)ミューメタル材によるSQUID冷却フォルダー、(5)ノイズキャンセラ、は本年度中に全て設計・製作を完了した。特に、(2)高温超電導電流センサーの設計段階においては、有限要素法を用いた三次元磁場計算コード(OPERA 3D)を用い、発生する磁場とインダクタンスの最適化を行った。さらに、OPERA 3Dによるシミュレーションは、(3)高透磁率マグネティックコアと、(4) ミューメタル材によるSQUID冷却フォルダーの設計の際にも行っている。本年度、上記(1)から(5)に記した装置の開発・製作を完了したので、既存のSQUIDモニタープロトタイプを解体後、新しい装置と交換し、再組み立て作業を行った。現在、実機としての使用を目指し、冷凍機を再稼働し、オフラインでのSQUIDモニターの特性測定と、環境磁気ノイズの解析・評価を行っている。 交付申請書に記載した通り、平成24年度には「SQUIDモニター実機への改造」を完了し、平成25年には「SQUIDモニター実機の試験」を行う予定なので、本研究は順調に目的を達成していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、SQUIDモニター実機のオフライン試験を行い、加速器のビームラインへのインストール作業を行う。9月からのマシンタイムに於いて、実際にビームを使用して測定を開始する。具体的な推進方策は以下の通りである。① 信号源による模擬ビーム電流を用いて、感度の測定を行う。高温超電導SQUIDのノイズを、FFTにより、DCおよびACの両面から分析を行う。また、ノイズキャンセラを用いることにより、磁気遮蔽率の測定を行う。さらに、外部磁場の周波数応答性についても評価を行う。② 理研の加速器施設内にインストールし、ビーム試験を行い、電流感度、周波数応答性を測定する。さらに、周波数領域における解析を行うことにより、加速器の電源やRF電圧の診断に用いる。RIビームファクトリーにおいては、加速するイオン種によって異なる加速器を使用するので、これら幾つかの加速モード毎に試験を行い、加速器系のビーム安定度の知見を得る。③ SQUIDモニター実機に放射線用ドッチメーターを取り付け、耐放射線のデータを取得する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
交付申請書には、平成24年度に「計測用電子回路および測定器」を購入予定と記したが、仕様を満たす測定器の検討が遅れたため、繰越金が発生した。平成25年度は、① SQUIDモニター実機の移設費、② 加速器ビームラインへインストールする真空パイプの製作費、③ 24ビットADコンバーターの購入、④ 学会への旅費、論文発表に予算を使用する予定である。
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