2012 Fiscal Year Research-status Report
児童における体力ならびに定量化された身体活動量と心理的因子との関連性
Project/Area Number |
23601026
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Research Institution | Kyoto Bunkyo University |
Principal Investigator |
長野 真弓 京都文教大学, 臨床心理学部, 准教授 (10237547)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊谷 秋三 九州大学, 基幹教育院, 教授 (80145193)
足立 稔 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70271054)
島田 香 京都文教大学, 臨床心理学部, 講師 (60583333)
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Keywords | 体力 / 身体活動量 / メンタルヘルス / 子ども |
Research Abstract |
本年度は、昨年度の地方都市郊外の公立小学校に加え、全く社会環境の異なる都市部私立小学校の児童約240名を対象に、体力、3軸加速度計を用いた身体活動量、親子の生活習慣と養育意識、さらに4年生以上には標準化された調査票を用いたメンタルヘルスを調査した。また、業者が実施した学力テスト結果と年間欠席日数に関する情報提供を受け、データ解析を実施した。 対象校児童の体力レベルは、全国標準および市の成績よりも低く、低体力群(文部科学省新体力テスト評価でD~E)に属する児童の割合が男女ともに高かった。実際の運動時間を見ると、放課後の屋外での自由遊び時間が極めて短く、一週間に全く外遊びをしない児童は全体の35%を占め、学年が上がるにつれてその割合が高かった。さらに、高学年になるにつれ、外遊び時間と運動教室への参加が減少し、学習塾への参加が急激に増えることで、身体を動かす時間が極端に減っており、これが高学年における低体力の原因の1つと推察された。その他の生活習慣では、睡眠時間が他の報告で見られる値よりも極めて短く、一緒に通学、放課後一緒に遊ぶ友人がいない児童の割合がいずれも35%、2人以下の児童が50%を占め、学校以外の時間を一緒に過ごす友達が限られている私立校ならではの傾向が伺えた。 体力・生活習慣と他の調査項目との関連を検討したところ、年齢で調整しても、中・高体力(評価A~C)の児童は、低体力児童に比べ欠席日数が有意に少なく、業者テストの点数も約10ポイント高かった。さらに、高体力群では一緒に遊ぶ友人の数も有意に多く、必然的に身体を動かす機会が増えている可能性が示唆された。あるいは、活発な子どもは他者とのコミュニケーション能力も高く、その結果友人が多いという現象につながっている可能性も推察された。なお、メンタルヘルスと体力・身体活動との関連については、現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度実施した地方都市郊外の公立小学校の調査に加え、社会環境の異なる都市部私立小学校のデータが取得できたことで、社会環境が全く異なる児童において、好ましい体力を有することが、学業成績・欠席日数の抑制・良好なメンタルヘルスと独立して関連するか検討できる。さらに、両校の保護者の生活習慣と養育意識を比較し、社会環境特性の違いとの関連を明確に示すことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が当該課題の最終年度であるが、成果をまとめるのにほぼ問題ない量のデータが取得できている。しかしながら、来年度も、さらにサンプル数を増やす方向で活動していく。 来年度の大きな課題は、取得したデータを成果として公表することである。昨年度の地方都市郊外の公立小学校、今年度の都市部私立小学校それぞれの中で実施した解析結果を、学術雑誌に研究資料として報告すべく、原稿を執筆中である。 現時点で、両校の特性比較に加え全く異なる環境下にある児童においても、体力が独立してメンタルヘルスや欠席日数に関連する解析結果が得られており、日本体力医学会学術大会にて発表予定である。それと並行して出来うる限り早期の論文化を進める所存である。 また、当該課題の重要な調査項目である実測した身体活動量についても、データ集計を進めて実態を把握してメンタルヘルスや生活習慣との関連を検討し、適宜成果を公表していくことで、当該課題の目的を達成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
横断研究である当該研究課題では、現在、2つの対象校でベースライン時のサンプル数を増やすべく、調整を続けている。次年度は、メンタルヘルス調査票の出版元の承諾を得て、オリジナルアンケートに質問項目を含めて作成でき、価格も従来の6割に押さえられることとなった。さらに、アンケート印刷・発送までの実務作業、回収したアンケートのデータ入力まで、一括して業者委託が可能となり、実務にかかる負担が軽減される予定であるので、新たな対象校の調査も視野に入れて、成果の公表に加え、可能な限りデータ収集も並行して行う予定である。 次年度の研究使用予定としては、物品費200,000円、旅費350,000円、人件費・謝金300,000円、業務委託費700,000円、成果公表にかかる経費を100,000円程度見込んでいる。
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