2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23611001
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
阿久津 洋巳 岩手大学, 教育学部, 教授 (10374860)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 日本語表記 / 読みやすさ / 心理物理学 / 空間配置 |
Research Abstract |
読みやすい日本語の文章を文字表記の視覚的特性から調べることが本研究の目的である。特に文字の空間的配列に重点を置き、主観的な読みやすさの評定と客観的測度を調べることが研究の特徴である。 2011年度は、3つの側面から研究を進めた。1つ目は、客観的測度として自律神経系における交感神経系と副交感神経系の活性化の程度を読書課題時に測定する方法を開発した。これは岩手大学教育学部教授の井上祥史が開発した近赤外線使用モニター装置を使って行われた。音読による心理的負担を調べたが、容易に読める大きさの文字では3~5分程度では、負担は軽いことが確かめられた。計測はリアルタイムで実行できるが、データ処理の簡略化にまだ解決すべき問題がある。 2つ目は、実験に使用するコンピュータとソフトウェアーのシステムに「日本語の文章を提示する」プログラムを準備した。MATLABとPsychtoolboxを使うシステムであり、文字の空間配置の条件を高精度で統制できるため、2012年度中にコンピュータ画面に日本語の文章をさまざまに空間配置で提示して読みの速さと読みやすさを計測する実験が可能となった。 3つ目に、書道の文字の美しさ官能評価の手法を用いて調べる研究を行った。日本と中国に伝統的に伝えられ、現在も義務教育で教えられている書道の文字(字体)に関して官能評価の手法を用いた研究はほとんどない。書道で「美しい」と言われる字体について、その評価方法を検討し、35の質問項目を使い実際に3つの特性を数量化する尺度を作成した。この研究には岩手大学教育学部准教授の平田光彦(書道教員)が研究協力者として参加している。現在研究論文を準備中である。 その他、文献研究により、文字の読みやすさ、読字障害などについて研究を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2011年度は、実験を準備することが目標であった。この目標の達成度は十分ではなかった(7割かたの達成)。その理由は3つある。1つは、東日本大震災の影響で、大学の教育スケジュールが2011年度の前期と夏季に変更されため、7月と8月の授業関連の負担が増大した。その結果研究に割り当てる時間が削減された。2つ目は、2011年の初夏から日本全土を襲った節電の波である。岩手大学では、空調設備の使用に制限が課されたため(岩手大学教育学部では前年度比で約28%の過剰な電力消費削減を達成した。当然ながら研究環境は悪かった。室温の記録があります。)、私の研究室と実験室は、気温が30度以上が通常状態状態となり研究室における研究が不可能になった(30度以上はコンピュータの運転条件を満たさない)。3つ目は、上記の結果研究代表者は、夏の暑さのため6月末から10月半ばまで体調不良となり、十分研究活動ができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2012年度は、研究代表者は5月半ばから8月半ばまで、サバティカル研修が取得できたため、授業と雑用の負担がなく、本研究課題に関連した研究を行う。読みにくい文字を長時間読むことにより生じる心理的負担を、心理物理学的に計測する方法発展させ、実用可能とする。 次に、文字の大きさと文字のコントラストを変数として、文章の読みやすさを心理物理学的に測定し、加えて心理的負担の計測を試みる。平行して、文字の行間隔が読みやすさに及ぼす影響を、簡便な紙と鉛筆を使った調査で検討する。 上記3つの結果を見た上で、刺激条件を統制して、行間隔が文章の読みやすさに及ぼす影響を心理的負担の客観的評価を含めて実験的に究明する。 書道の文字の美しさの研究は、2012年度も継続する予定である。 2011年度に研究費に残金が出た理由は、研究が遅れたため予定通り研究費を使用できなかったためである。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2011年度の残金を合わせて、以下の使用を予定している。備品の購入は、輝度計と周辺機器(450,000円)とコンピュータ(100,000円)を予定する。コンピュータソフト等(150,000円)の購入を予定する。謝金については、学生のアルバイト(200,000円)を予定する。最後に、論文発表費用(100,000円)計画している。
|