2012 Fiscal Year Research-status Report
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23611001
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
阿久津 洋巳 岩手大学, 教育学部, 教授 (10374860)
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Keywords | reading / visual span / aesthetic impression |
Research Abstract |
H24年度は、文字の垂直提示と水平提示を比較して、どちらが読みやすいかを調べる実験を1つと文字の空間的特徴を変形した書の美的効果の調査実験を2つ実施した。水平垂直提示実験は、University of MinnesotaのG.E.Leggeとの共同研究であるが、現在結果を分析中である。書の美的効果は、平田光彦(岩手大学准教授)との共同研究である。 文字の垂直水平提示の実験は、文字の読みやすさに及ぼす空間配置要因のうち垂直方向と水平方向の配列の効果を調べることを目的とした。この実験は、日本で近年伝統的な縦書き配置よりも横書き配置が増えつつあるが、実際はどちらが読みやすいのかという問題にアプローチしたものである。読みの習慣が読みやすさに影響する可能性も考慮された。結果は、日本人は、アメリカ人と同じく横書きの方が多少読みやすく、この傾向はひらがなも英語のアルファベットでも同じであることが判った。 書の美的効果の研究は、文字の空間特性のひとつとして書における辺と角の長さが美的印象に与える影響を調べたものである。書道で美しい書といわれる文字の辺と角に注目して、「均整美」「開放性」「力動性」の3因子からなる評定尺度を作成して、実証的に文字の美的印象を検証した。書の美的効果は、2つとも学会誌に発表された。1.日本官能評価学会誌, 17,1,21-28. 2013. 文字造型の感性評価1。2. 書写書道教育研究,27,50-57,2012. 文字造形の感性評価2。 以上に加えて、読みにおける心理的負担を測定する方法として、脈波測定による自律神経系の活動状態をモニターする方法の適用可能性を検討するとともに、近赤外光イメージング装置(functional NIRS)による脳活動の測定法を適用することを検討した。まだ形になる実績は出ていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由1:2012年、2013年ともに酷暑が続いた。大学の方針により研究室に空調設備を設置できないため、夏の7月~9月は実質的に研究の続行が不可能であった。加えて、暑さで体調を崩し、回復するのに10月末までかかった。合計すると6~7か月分の遅れが生じた。 理由2:当初計画になかったfunctional NIRSを加えようとしたため、努力の配分が予定と異なり読みの実験に向ける努力がやや少なかった。(反省している。) 理由3:当初計画になかった書道の研究を含めたため、努力の配分が予定と異なった。しかし、予定外の研究成果も上がった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず文字の空間配置に関して、縦横の方向の問題を解決する。すでに実験データはあるので分析して論文にまとめる。ついで、文字間隔ついてcrowding effectを指標として適切な間隔を調べる。これら空間配置の効果については、主観的印象評価のデータも収集する。 研究課題の第二の柱である訓練効果を調べるため、縦横配列と文字間隔について訓練実験を実施する予定である。縦横配列に関しては、日本人は十分に縦配列に対して訓練されているにも関わらず、横配列優位が見られた。また、文字間隔のcrowding effectも訓練の効果が小さい。したがって、訓練による視覚情報処理増大は限られたものであろう。 最後に、読みにともなう心理的負担を神経生理的指標を使って調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品費 0 円。消耗品費 200千円。旅費 600千円 (海外出張費を含む)。謝金 100千円。その他 81千円。 繰り越し金と次年度の請求額を合わせて、出張と実験参加者への謝金を中心に研究費を使用し、実験課題達成を促進する。
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Research Products
(2 results)