2011 Fiscal Year Research-status Report
デザイン要素の「ちがい」を魅力に変える「目利き力」の感性科学的基盤解明
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23611004
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山中 敏正 筑波大学, 芸術系, 教授 (00261793)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十嵐 浩也 筑波大学, 芸術系, 准教授 (80258839)
内山 俊朗 筑波大学, 芸術系, 講師 (50334058)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | デザイン / 感性科学 / 脳機能 / 教育 |
Research Abstract |
本研究課題は,デザイン品質に関与すると考えられる製品イメージや形状要素間の「ちがい」感を魅力化する感受性を「目利き力」と定義し,その養成のための感性科学的基盤を,心理・生理指標から明らかにすることにある.平成23年度は,異なったデザインの特徴に対して,デザイン教育を受けることによって感性評価にどういった違いが生じるのか,工業製品のデザインを用いて言葉による評価とその評価時の脳血流をもとに計測した実験と解析を行った.まず,サンプルとする工業製品を選定するにあたり,教育によって知識が大きく異なることが少ない,一般的なオブジェクトとして椅子を選んだ.(大学院生20名の評価による)その後,選定した椅子13脚をサンプルとして,9名のデザイン教育経験者,10名のデザイン教育非経験者を被験者として8対のSD法による評価を行わせ,同時に被験者の左右前頭前野部の脳活動の評価を行った.その結果以下の現象を確認した.(1) 異なった椅子に対する評価は,全てのSD評価対において教育経験にかかわらず何らかの共通性が見られた.(2) 「構造の安定性」に関するSD対による評価のみが,デザイン教育によって評価傾向が異なることが確認された.(3) 「構造の安定性」評価時の脳血流において,デザイン教育経験者は非評価時に比べて左前頭前野部および右前頭部の血流量が有意に増加した.すなわち,シンプルとか一体感といったデザイナーが評価ポイントとする項目はデザインに対する知識興味などが高いことによる評価傾向の違いには反映されないが,技術的側面である構造の評価は知識興味などによって影響を受け,それは脳血流の違いにも反映されうることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで,創造性を確認するための研究課題(永盛祐介, 中島瑞季, 横井聖宏, 山中敏正, ブロックによる椅子模型制作時の脳活動の分析, 日本感性工学会誌, vol.9 No.1, pp.51-60, 日本感性工学会, 2009/07),作業効率と好みの関係(Lei SHI, Shiho NAKAMORI, Toshimasa YAMANAKA, Comparing Effects of User's Kansei Excited by Color Information of Interface, Kansei Engineering International Journal Vol.9, No.1, Japan Society of Kansei Engineering, 2009/05)などの研究を行ってきたが,脳機能などの生理計測指標とSD法などによる主観評価の結果の一致性を示す事例があまり確認されなかったなかで,デザインのトレーニングを積むことによる評価の違いが両者にともに現れることを確認できたため.
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Strategy for Future Research Activity |
経験の差異によるプロダクトデザイン要素の評価の違いを主観評価と生理機能計測で確認する可能性が示されたが,そのために実験のパターンが膨大になったため,被験者として本来計画していた熟達者を扱うための障害になりうることがわかり,この解決が次の課題となっている.本研究の目的である「目利き」の評価に繋げるためにはさらに実験方法と被験者について検討する必要がある.現在,評価資料として学生作品集を用い,その要素を整理したうえで,作品集の目利きである企業の評価担当経験者と教員,そして,学生 の評価傾向の違いを特定するための実験を計画中である.さらに,背景知識の違いを考慮して,直観的判断に影響する要因の推定に繋げたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
さらに検討サンプルを増やして一般的客観的な成果を得るために,実験試料の制作,実験環境整備のためのパネル等の購入および研究発表費用として使用する.なお平成23年度残額については,4月の会計で使用いたしました.
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Research Products
(13 results)