2011 Fiscal Year Research-status Report
スタイル画の感性価値を活かした衣服デザインの創造的設計支援システムの開発
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23611035
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
森下 あおい 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (10230111)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | スタイル / 感性 / ファッション |
Research Abstract |
衣服デザインにおけるスタイル画では、人の感覚的なデフォルマシオン(意図的な変形による芸術的効果)により、衣服構造の情報、身体性・美意識・イメージが同時に表現される。それは衣服デザインのアイデアの創出過程に、デザイン性と芸術性の融合が極めて重要であることを示している。そこで今年度は、スタイル画が描かれる用途の中でも,創造的なデザインを創造する目的で描かれたコンテスト作品におけるスタイル画とそれから制作された実物作品から、デフォルマシオンの特徴をより明確に抽出すること目的とし研究を進めた。 資料は、1990年~2009年までの20年間にわたる同一のファッション雑誌141冊であり、掲載された公募のスタイル画,合計707枚から、描かれた着衣人体が極端なポーズをとっていない正面向き、あるいは横向きで、直立した姿勢であるデザイン画を選び、デフォルマシオンの要素として最も基本データとして、着衣人体のプロポーション、顔の部位表現の省略についてを調査した。さらにデフォルマシオンと描かれた実物衣服のデザインの内容との関係をシルエットの特徴と服種から分類した。 1990年代の前半から90年代中頃のスタイル画では、11頭身や12頭身という頭部の小さいスタイル画が多く、1990年代中頃から2000年代では、時代が後になるにつれ、10頭身、9頭身、8頭身と、徐々に頭部が大きいプロポーションへと推移し、1990年代には少数であった6頭身や7頭身という現実的なプロポーションが描かれるなど、デフォルマシオンの特徴と時期的推移が判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を遂行するために重要な資料であるスタイル画の収集は、当初、1000点を目標としていたが、これまでに約700点の収集を終え、さらにそれらは1990年代~2000年代の20年間に渡るものである。このことにより、これまで行われてこなかったスタイル画の長期間に渡る時期的推移の分析を可能になった。また、スタイル画のデフォルマシオンの分析では、着衣人体におけるデフォルマシオンの最も基本的な特徴を示すプロポーションを計測し終えた。このように資料収集とそのプロポーション計測に関しては、概ね計画に沿った内容を順調に遂行できたと考えられる。 これまでの研究をもとに基礎資料の分類を詳細に行うことで、デフォルマシオンの要素が特定化され、分類の方向性を明確に示すことができた。 なお既に入手したスタイル画は創造的な用途として限定された目的であり、まだ偏りがある。従ってスタイル画の特徴の観察を詳細に行い、国内外のスタイル画表現の種類から表現の多様性を定量的に確認することが今後は必要と考えている。同時にスタイル画の描かれた表現の時時代性、背景や目的をより明確にすることも必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにスタイル画のデフォルマシオンの要素として極めて基本的な着衣人体のプロポーションを定量化したが、今後はデフォルマシオンの要素を詳細に調べ、法則性を見いだす必要がある。そこで、スタイル画上でデフォルメされたプロポーションの各部位が、現実の人間のプロポーションと衣服とどのように差異があるのか、また衣服に制作される際には、スタイル画の部位からどのようなサイズ的な変化によって、設計されるのかなど、人体形状と着衣表示方法をコンピュータ画像上で検討し、より正確に定量的なスタイル画と衣服の相互関係性について分析することが必要である。 こうした目的から、スタイル画から実際に制作された衣服がどのようなプロポーションの変化をもたらされているのか、デフォルマシオンの法則性を定量的に照合する手法そのための方法として、モーフィングの技術を用いての検討を行う。モーフィングは、ひとつの形状から別の形状へ徐々に変化する様子を動画で表現するものであり、その中間を補うための画像を観察することが可能である。そこで、これまでに入手したスタイル画の中でも、描写されたシルエットが人体形状に近い内容を抽出し、スタイル画と制作された衣服を対応させようとするものである。 この手法は、コンピュータ画像上でデフォルメされたスタイル画の輪郭線に数点のポイントをつくるとともに、現実に制作された衣服形状上にも同じ意味を持つポイントを設定するものであり、これらポイントを設定した双方のコンピュータ画像から、中間の画像を作り出し、各部位の変化の様子を確認することで、デフォルマシオンによって表現されたスタイル画とそこから導きだされる現実の衣服の関係性について定量的な分析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、スタイル画から実際に制作された衣服がどのようなプロポーションを定量的に照合する手法そのための方法として、モーフィングの技術を用いるためにソフトウェアが必要である。モーフィング用いた分析には、既存のソフトウェアだけでは、人体形状の描出が困難であり、そのために、本研究の目的に合わせて改良、あるいはプログラムを作成する必要がある。また各種資料からの体形データの抽出と3次元体形の再構成は、オリジナルモデルを作成することになる。できるだけ少数個の体表データによって現実のサイズへと変換した体形を表示する人体モデルを検討することや、画像上でスタイル画の体形と着衣形態の関係を分析し、目視ではできないデザインの種別、時代別の詳細な比較を定量的に行うことを計画している。 この目的のため、次年度の研究費として人体形状の動画を作成するための動作環境を備えた設備備品としてコンピュータ、および消耗品の3次元人体形状に関するソフトウェアの購入が必須であり、さらにデータ分析のための専門家によるプログラム作成費が必要である。またスタイル画の姿勢やポーズの検証を行う為、現実の人間モデルによるポーズの再現実験のための謝金に使用する。
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