2012 Fiscal Year Research-status Report
スタイル画の感性価値を活かした衣服デザインの創造的設計支援システムの開発
Project/Area Number |
23611035
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
森下 あおい 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (10230111)
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Keywords | デザイン画 / 感性 / 定量化 / デフォルマシオン / 定量化 / パターンメーキング |
Research Abstract |
本研究では、アパレル分野で衣服デザインを製作する際に描かれるスタイル画におけるデフォルマシオンの役割と機能に着目し、その調査、分析を行うものである。衣服デザインにはイメージ表現が極めて重要であり、デザイナーは衣服のシルエットやディテールの特徴を何等かのイメージを高めたり、さらにまとめる作業として、描く人体と衣服にデフォルマシオン(意図的な変形による芸術的効果)を行うことが多い。デザイナーがアイデアと創造性をまとめ、パタンナーにイメージを伝達するために有用なデフォルマシオンであるが、現実とは異なるスタイル画のプロポーションからパターンメーキングを行うことは極めて難しい。したがって現状の生産過程では、デザイナーとパタンナーが繰り返しデザインの確認をとりながら型紙の内容をする。そこで、もしデフォルマシオンされたスタイル画から、現実のパターンメーキングに必要なプロポーションをはじめとした数値的な情報が得られたなら、パターンメーキングが迅速化され、デフォルメされたスタイル画が最終的にどのような衣服になるのか、そのシュミレーションが可能になる。こうした背景から、本研究では多数のスタイル画の資料とその実物作品と現実の人体や衣服との相互関係を調査し、デフォルマシオンの特徴を定量化し法則性を導き出す。そして最終的なデザインを3Dモデルとして可視化する。そして、多様な衣服デザインのアイデアを扱いながら、設計行程の早い段階でデザインを相互評価することが可能なシステムを開発する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去の日本における服飾分野のデザイン画について、その変遷とデフォルマシオンの表現の特徴を調査した。さらに1960年代以降に、製作のために描かれたデザイン画とその実物写真を収集し、他の服飾デザイン画と比較した。さらにそれらのデザイン画としての特徴と表現の時代的傾向の概要を、同時期のファッションデザインの傾向と照らし合わせて検証した。次にデザイン画のプロポーションの分析を行うために、直立姿勢のデザイン画に描かれた人物像の頭身数とプロポーションの関係を調査した。デザイン画から身体各部位の長さ(寸法)を抽出する必要があるため、2次元骨格モデルを作成し、試料のデザイン画に適用した。骨格モデルは2次元座標を持つ関節点で構成されるものであり、人体各部位の長さを求めるのに適した点をデザイン画上に推定し表示した。その推定に関して、複数のデザイナーによる実験を実施し、信頼性についての検証を行った。この骨格モデルの適用により、デザイン画の人体が画像上での数値情報として抽出可能になり、8頭身を超えるデフォルマシオンが施された長さ方向のプロポーションの描かれ方に、一定の法則性があることを見出した。これらの内容から、本研究の達成度は、当初の研究目的に対して概ね計画通りに遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
作成した骨格モデルを用いたデフォルマシオンのプロポーション分析を行う。さらに衣服デザインとの関係を分析するために、標準的な衣服シルエットの型として、デザインを分類し、この際には衣服パターン作成時に形態情報となるシルエット点を用いた2次元衣服モデルを作成する。姿勢、ポーズについても、モデルから得られる数値情報が自動的にパターン情報として読み取ることを可能にするため、着用形態を正規化する。この衣服モデルから、衣服寸法、外形情報を抽出し、デザイン画と現実の衣服との相互関係について分析を行い、デフォルマシオンされたデザイン画から、現実の体形に対応する衣服パターンの作成を導く。こうしたデフォルマシオンの特徴を時系列で調査し、デフォルマシオンが関係する要素についての分析を行う。またこれら一連の衣服モデルの運用についての有用性を評価するため、デザイナーへの評価実験による検証を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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