2012 Fiscal Year Research-status Report
インクルーシブデザインと脳科学~移行の共生デザイン感性論
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23611036
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
松井 紫朗 京都市立芸術大学, 美術学部, 教授 (60275188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 悟 京都市立芸術大学, 美術学部, 教授 (30515515)
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Keywords | インクルーシブデザイン |
Research Abstract |
二年次は、研究代表者松井紫朗は、昨年に引き続き、動的環境におけるイメージ認知の研究に関して具体的事例の絞り込みを試み、研究分担者の高橋悟は、同じく分担研究をしている「生存の技法:医療・芸術・脳科学融合領域研究」と連携しながら、活発な作品制作、シンポジウムを通じて、ワーキングメモリーとシーケンスの研究について、共生デザインの視点からアプローチを試みた。動的環境におけるイメージ認知の研究については、前年度より、体性感覚の変化と知覚の変化の関係性、とりわけ前庭覚への刺激とそれと連携する受容器との関係性の解明に目標を定めたが、本年度は、自動化した二軸回転装置とそれを覆う立体スクリーンにプロジェクションされる動画を用いた実験から、見上げたときと通常の姿勢での見え方の違いに着目し、これについての比較・分析から着手した。具体的な現象としては、見上げる姿勢では、自己と自己を取り巻く環境との関係性の認知に変化が起きていることが認められ、まずは、視覚的な奥行感覚の変化という観点から、そこで起きている変化の度合とそれをひき起こす要因、両面から解明を試みることとした。特に上を見上げるという姿勢の変化が、前庭覚、頚筋と首の自己受容感覚、いずれの体性感覚入力と結びつき奥行の把握の変化につながっているかが注目され、距離感と結びつくさまざまな錯覚刺激と、前額平行面での正位置と横臥の姿勢、見上げる姿勢を組み合わせ計測を試みている。ワーキングメモリーとシーケンスの研究については、特に大阪中之島でおこなった、天井画を二軸で揺れながら回転する鏡に映しこみ、観客に身体が浮遊する感覚を起こす装置による作品の公開によって、見下ろす姿勢からオレンジ色の鏡の反映を通して見上げること、自己の鏡像と天井画の人物の揺れの相互作用で、視覚、前庭覚間の齟齬と、定位するイメージの形成過程の関係についての考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自己の定位を失った不安定な状態を環境に向けて開かれた状態であると肯定的に捉え、前庭覚に影響を及ぼす二軸回転装置を舞台として、NIRSを用いた計測により、活動している部位とその時に起きている情動との関係を明らかにしながら、新しい共生デザインの概念に基づく環境を探る本研究であるが、初年度の調査により、これには、NIRSでは計測不可能な脳内深部との連携を捉えうる新しい計測機器の必要性を見出した。それを受け、次年度は、脳計測に関しては、新しい計測機器とそれを所有する研究機関との将来の連携を期待しながら、本研究ではまず、二軸回転装置を中心とする実験装置を用いながら、体性感覚と知覚の変化、それと結びつく情動との関係性を示す事例を探求し、前庭覚とそれと連携する他の自己受容器との関係について、作品と作品を用いた実験、計測により客観的に示すことを目指すこととした。体性感覚と知覚の変化について、松井は、見上げることにより自己定位の把握に変化が起きることを捉え、それをさまざまな刺激と体性の変化を組み合わせながら、客観的に数値化できるような実験装置と方法の開拓を進めることができた。また、高橋は、新しい二軸回転装置を開発しながら、それを展覧会という形で公開し、それを使って、視覚、前庭覚との関係の齟齬と、定位するイメージの形成過程の関係について明快な経験として示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
二年次後半より、体性感覚と知覚の変化、それと結びつく情動との関係性を示す事例を探求し、前庭覚とそれと連携する他の自己受容器との関係について、作品と作品を用いた実験、計測により客観的に示すという目標がようやく現実化しつつある。見上げる見下ろすと言った日常的な動きと結びついた体性感覚入力により、自己定位の把握に変化が起きる現場を捉え、それを異なる刺激と体性の変化とをさまざまに組み合わせながら数値化し、客観的に把握、理解できるような実験装置と方法の開拓を昨年に引き続き本年も行う。これまでの実験で、テレビモニター、より解像度の高いコンピュータ画面、スクリーンの透過、反射によるプロジェクション、鏡による虚像など、刺激表示のための媒体の違いが、経験の印象や数値の開きにも影響を与えることが明らかになってきているので、より明確に差を示すことのできる実験方法と装置の確立を行う予定である。これにより、最終年度は、体性感覚入力による知覚の変化、新たな自己定位の形成に向けた心の動きを示すこれらの事例を知見として提示し、新しい共生のためのデザイン概念の確立に向けた提案となることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上を見上げるという姿勢の変化が、前庭覚、頚筋と首の自己受容感覚、いずれの体性感覚入力と結びつき奥行の把握の変化につながっているか、motion in depth、ポンゾあるいはミュラー・リヤーなど距離感と結びつく錯覚の刺激と、前額平行面での正位置と横臥の姿勢、見上げる姿勢を組み合わせ計測するための新たな装置の製作には、二年次の残り予算が不足しており、これを残金として最終年度に繰越し、最終年度の予算と合わせて製作する予定である。またこれにともない、あらたな実験装置の開発、組み立て運搬、実験データ取得と解析のための補助員の費用などが見込まれる。
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Research Products
(2 results)