2011 Fiscal Year Research-status Report
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23611049
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Research Institution | Kobe Design University |
Principal Investigator |
大塚 英志 神戸芸術工科大学, 先端芸術学部, 教授 (20441355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉 政文 神戸芸術工科大学, 先端芸術学部, 助手 (20441363)
菅野 博之 神戸芸術工科大学, 先端芸術学部, 准教授 (60549666)
杉本 真理子 神戸芸術工科大学, 先端芸術学部, 講師 (50319901)
本多 マークアントニー 神戸芸術工科大学, 先端芸術学部, 助手 (70594373)
山本 忠宏 神戸芸術工科大学, 先端芸術学部, 助教 (60441375)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 電子書籍 |
Research Abstract |
WEBコミックの文法形式を国際規格として再構築することを目標とし、(1)国内外のWEBコミックのリサーチ、(2)歴史的資料の検証、(3)文法形式の仮説作業、(4)(1)~(3)により仮説された文法に基づく作品作り、(5)作品の解析による検証の五つを行った。(1)のリサーチにおいては企業のWEBコミック開発の現場のヒアリングを行い、出版社系の企業は出版によって収益を得るビジネススキームのため既存のまんが形式を変化させずWEBに移行させたい傾向を持ち、IT系企業はそれに頓着しない傾向があることがわかった。本研究は紙媒体で展開することを想定しないことでよりWEBに適応した形式の構築を目標とすることに改めて定めた。(2)歴史的資料の解析については「信貴山縁起」の全巻をまんがのコマ形式に変換すること、1920年代の大正アヴァンギャルドから一五年戦争下、まんが表現が「モンタージュ」をどのように包摂してきたのかについてのプロセスの検証を行った。後者については「モンタージュ」、つまり「カット」としての「コマ」の接合の理論はWEBコミックでも有効である、という仮説が前提としてあるからである。(3)(4)(5)の文法を仮説として実作化し再検証するプロセスについては現状のWEBコミック表現及び論理的に仮説しうる形式から、その前提となる歴史的リサーチで成果があった横スクロール型とスライドショー型において実作者の協力の許、検証用作品の制作を行った。前者は絵巻の文法形式と日本型アニメーションのいくつかの技法の統合、後者は「モンタージュ」に特化してカットをつなげる技法を実験的に行い、応用しうる手法を検証するとともに新たな問題点を抜き出した。他の文法形式についても同様の作業を行ってきた。このようにして仮説的に構築された文法が日本以外の文化圏で理解されうるかについては留学生を対象に予備的リサーチを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
WEBコミックにおける国際基準規格の提示という目標に対し、10程度の仮説及び事例をもとに(1)韓国WEBトゥーン型縦スクロール、(2)横スクロール、(3)スライドショー形式、(4)1頁表示型、の四つの可能性に絞り込み、それぞれ実作者の協力を得、論理的に考えられる文法体系の検証を行った。(1)は韓国のインターネットで一般化し日本にもその影響が及び始めている形式で画面上で上下に画面が移動していくタイプ。まんが表現が文字、コマの進行が「横書き」である韓国まんががWEBに適応した形式である。(2)は(1)から「縦書き」である日本まんがのWEB対応形式として仮説的に導き出されたものである。この「横スクロール」については「信貴山縁起」を解析しまんがの表現との互換性を確認した上で、異時同図や場面転換の手法などを絵巻から転用できるとともに画面をマルチプレーン的に重ねることで奥行きを表現する技法や基準線を明確にした視線誘導の基本技法などを作画制作を通じ検証した。(3)のスライドショー形式は、静止したカットを連続する手法により、日本のリミテッドアニメーションに近い形式になりうることが試作品と解析の反復でわかってきた。(4)については、現状のまんがに近い形でWEBに移行する場合、見開き(2頁)単位の表示でなく、1頁単位の表示となる可能性があり、その場合「見開き単位」で成立してきたコマの文法の組み替えが必要になる。それについては検証が遅れている。一方、(1)の韓国型縦スクロールについては日本のまんが表現との互換性やコマの表示方法について実作による検証を始め、論理的に進化させうる余地があると考えるに至っている。
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Strategy for Future Research Activity |
リサーチ、歴史資料の検証と仮説→実作→検証の工程を反復的に行い、検証の対象として二つ程度の形式に絞り込んでいく作業を進行する。一方、中国等、東アジア及び北米などでのまんがの文法の地域差及び、その理解について海外で実際に日本型のまんが表現を描かせるワークショップを行うことで、まんが文法の理解における文化間偏差を把握する。また、韓国の実作者等の協力を受け、韓国型WEBコミックの標準型となりつつあるWEBトゥーン(縦スクロール形式)の解析とその文法的再構築を行い、異なる文化図の枠組みからWEBコミックの国際標準型を構築するプロセスを対比的に行う。また、仮説したいくつかの文法形式が異文化において正しく読み解かれるのかについての検証も必要となる。海外でのワークショップ形式のフィールドワークやヒアリングを今後、行っていくこととする。また、試験的に作成していく実験用作品の制作とそれを公開するサイトの構築も今まで以上に積極的に行っていく。WEBコミックを実際に運用していくのは企業であり、その公開担当者と特定の企業に偏らない形で、特にWEB技術上の実現可能性について情報収集や意見交換を行っていく必要がある。また、研究の中間報告的内容をシンポジウム形式で公開することなど、成果を発信していくことで研究へのフィードバックがされうるような情報発信を行っていく必要もあるだろう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は前年度の成果をふまえ、海外での調査的ワークショップを東アジア圏を含む最低二地域で想定している。交通費、宿泊費に加えワークショップ形式をとるので、通訳、テキスト制作、テキストの翻訳、会場費などの支出が想定される。また、日本側の視点からだけでなく、韓国のまんが形式の視点から国際標準規格を目指すアプローチを韓国人クリエーターに実作を依頼することで行う。それにともなう謝金、翻訳等の支出が想定される。また「仮説→仮説に基づく実作→検証」のプロセスはより反復的に繰り返されるため実作協力者に対する謝金、交通費等の支出が想定される。また、試作的作品を公開するためのサイトの整備において運用コストが発生する。WEBコミックにおいて旧来型の紙媒体での「見開き」形式でのWEBコミックを目指す出版社系のWEBコミック担当者へのヒアリングも改めて必要となるだろう。WEB系企業へのリサーチを兼ね、年数回程度、研究会を開き、成果についての検証を行うことも必要となってくると思われる。海外調査及び実作による研修が集中的に行われていくことで、PC及びアプリなどの支出も想定される。前年度、日本での仮説作業での進展が順調であったので上記の作業を集中的に行う。
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