2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23611049
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
大塚 英志 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (20441355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉 政文 神戸芸術工科大学, 先端芸術学部, 助教 (20441363)
菅野 博之 神戸芸術工科大学, 先端芸術学部, 准教授 (60549666)
杉本 真理子 神戸芸術工科大学, 先端芸術学部, 講師 (50319901)
本多 マークアントニー 神戸芸術工科大学, 先端芸術学部, 助手 (70594373)
山本 忠宏 神戸芸術工科大学, 先端芸術学部, 助教 (60441375)
中島 千晴 神戸芸術工科大学, 先端芸術学部, 助手 (00594376)
ユン ソンチョル 神戸芸術工科大学, 芸術工学研究科(研究院), 助手 (20642292)
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Keywords | webコミック / まんが / 電子書籍 / 映画的手法 / リミテッド・アニメ / 縦スクロール / まんが入門書 |
Research Abstract |
webコミックは日本国内に於いては、そのビジネスモデルが「web上で無料で公開された後、従来型のコミックスとして刊行され収益を出す」という考えが主流となり、web端末に適応したまんが表現の進化が起きにくい状況にある。その一方で韓国ではwebトゥーンと呼ばれる縦スクロール型のwebコミックが定着し、中国では週刊で刊行されるまんが誌がデジタルで全ページカラーリング化され刊行されており、スマートフォン配信に即事対応できる体制にある。まんが表現は商業メディアである以上、企業のビジネスモデルに形式性は左右されるが、webへの移行は日本に於いては停滞している。しかしまんが表現がweb端末に対応するには(1)縦スクロール形式(2)中割りを一切排除したカットのモンタージュのみの特化したリミテッドアニメーションの二形式が有効であるという結論を、協力者である山路亮輔との実験作品作りで得た。 日本のまんが表現の中で特化した「映画的手法」、つまり①1カットを1カットに見立て、コマの中にブロッキングサイズ、カメラ、アングル、カメラワーク、ライティングのレイアウト等の情報をより緻密に集約し、②それを「編集」(モンタージュ)する、という手法を本質とし、それを「縦スクロール型」及び「特化したリミテッドアニメ型」に持ち込む時のセオリーはほぼ実験作の製作で導き出した。そして、この技法の習得はweb上の技術でなく、むしろ前述の「映画的手法」のより徹底した習得が重要であるという結論に達した。そのため、この技法を日本以外の日本と異なるまんが文法体系の地域に於いて理解を深めてもらうため、その教授法と教材制作の着手に、中国、台湾、韓国、フランス、デンマーク等で調査を兼ねた教授法の実験を行い、それを元に論考及びまんが入門書のテキストを制作中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①縦スクロール型②特化したリミテッドアニメ型の二つの仮説モデルに関しては実験作をH25年度までに、①を2作品、②を7作品制作し、その過程で仮説したwebコミック上の文法について実作で応用可能であることを確認した。例えば①に於いては、ブロッキングサイズの極端な切り換え、画面の奥に向かう動線の重要性、コマ間の上下の視線の移動を導く中心線を軸とする構図、イマジナリーラインの重要性など、具体的な手法について結論を得た。 またwebコミック文法の基本として導入すべき「映画的手法」の海外での教授法を体系立てるワークショップは、5か国で延べ6回の調査を行った。また、web上での公用ワークショップも行い、中国、台湾、フランスからの実作者の参加を得て、地域ごとのまんが文法を踏まえた教授法の検討を行った。現在はそれを踏まえ、映画的手法の入門テキストの試作版をweb上に中国語(繁体字、簡体字)、フランス語で試験的に公開中である。 これら成果によって、成果を広く伝えるための一般向け啓蒙書の刊行の準備は整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前年度に開始したweb上でのワークショップでテキスト製作の最終段階に入る。石森プロダクションの許可を得て、故・石ノ森章太郎が映画的手法を教授する教材とした「竜神沼」を元に、web上で中国、台湾、フランス、日本の参加者によって、この技法のweb上でのワークショップを継続する。また、アジア圏の日本まんがの文法受容に於ける偏差の対比のため、アメコミ圏の北米とバンドデシネ圏のフランスでの追加調査を行う。また、webコミックの実験作を6本程度制作予定である。 本研究はワークショップ、実験作による仮説の検証という、まんが研究では例外的な手法を用いており、今年度はこの実験作制作を通じ、仮説の最終的な検証を行う。 その一方で、ワークショップで得た各地域の参加者による、まんがコンテュニティーの分析を通じて、映画的手法の教授法並びにwebコミックの文法の体系化を整理、教授テキストの作成を行っていく。 本研究はwebコミックの文法研究構築の基礎として、「映画的手法」の海外での教授法確立という新しい局面に入っており、日本と比較的文法体系の近い中・台湾向けの教授法テキストの目途が立ったので、その延長にバンドデシネ圏のヨーロッパ、アメリカンコミック圏の北米など地域ごとにカスタマイズされた教授法の確立のための調査が必要となる。
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Research Products
(12 results)